「結(ゆい)」という考え方について。

「結(ゆい)」という考え方について。

 

鎌倉時代の歌に「ゆひ(結)もやとはで、早苗とりてん」というのが有ります。皆で協力して苗を植えたという意味でしょうか。

 

結とは、田植え、茅葺の屋根葺きなど一時に多大な労力を要する際におこなう共同労働の事で、主に小さな集落や自治単位における共同作業の制度で一人で行うには多大な費用と期間、そして労力が必要な作業を、集落の住民総出で助け合う、協力し合う相互扶助の考え方です。似たような考え方に「もやい」といのもあり、

 

その違いは、「ゆい」とは共にはないが、たがいの約束にもとづいて共に事を行う事。「もやい」とは共にあるものが共に事を行うになります。「ゆい」の対義語になる考え方が、「やとう(ふ)」という言葉で、家問うが原義です。頼むべき家々をまわって労力の提供を申し入れ、それによって助けられれば自分の家もそれに応じて返すことを前提としたもので、さらに時代が進むと労力の提供の対価に賃金等を支払うようになり、それが現在の雇うという考えになりました。

 

昔の民家の建設、茅葺の葺き替えは個人の住宅でもいわば公共事業のようなもので、地域扶助の精神で支えられていました。近代は普請という形で大工さん等には賃金を支払っていましたが、茅葺きや建前など一時的に多くの人夫が必要な時には村人が無償で「ゆい」をおこなっていました。

 

昭和25年建築基準法が制定され、建てられる住宅の最低限度の基準が設けられると共に、戦後の個人主義の考え方や、高度経済成長での時間短縮、現場での安全確保など様々な要因が重なり「結」は姿を消してしまったと思います。

 

確かに危険を排除する事は大切ですが、なにがしら地域で支え合う地域扶助の精神は残していきたいですね。