茅葺きの屋根

茅葺の屋根を持つ古民家は、大きな屋根のその優雅な曲線と、黄金色に輝く茅の美しさは日本の自然風景に溶け込んで初めて目にした人もまるで自分のふるさとに帰ってきたかのような懐かしい感情を沸き上がらせるものだと思います。

 

そもそも茅葺きの茅とはススキやヨシの事。藁葺きは稲藁や麦藁を使った屋根です。

ススキはイネ科の多年草で全国に群生しています。ススキなどのイネ科の植物は、草刈り、火入れ、放牧などを続ける限り毎年再生産することが可能な循環型資材であり、建築材料としては最適です。

昔の茅葺き屋根の集まる集落には毎年茅を採集するために確保された土地があり。これを茅場といいます。

 

茅の刈り取りの時期は北日本では雪が降る直前に、関東以西の太平洋側は11月〜12月が多いようです。四国や九州等雪の少ない地方では早春に刈り取ったりします。

 

茅は屋外や屋根裏で貯蔵され、特に屋根裏で茅を貯蔵した場合、囲炉裏の煙等でいぶされると30〜40年以上貯蔵が可能です。

 

茅の入手方法並びに葺き替えには茅頼母子という制度があります。

茅頼母子(かやたのもし)とは共有茅場を持ち相互扶助で労働をおこなう制度の事。皆で茅を育て、収穫し、自分たちの家に貯蔵していた茅も他の家が葺き替える際には提供をする仕組みです。

 

茅葺屋根の寿命は一概に何年とは言えませんが、ススキやヨシの茅葺きで概ね20年から30年程度。麦藁で葺いたものは茅葺の3分の1、稲藁の場合は更に3分の1ぐらいになります。

 

茅葺の葺き替えは多くの人手と多くの茅が必要です。1件の古民家でも寄せ棟の場合一度に全ての屋根を交換する事はまれで通常は1面ずつ交換をおこないます。また集落の家ごとに順番におこなっていました。茅葺の葺き替え作業を通して地域のコミュニケーションが生まれ、相互扶助「結」という連帯が保たれていたのです。