竹小舞いについて…

P170 竹小舞下地土壁塗りについても文章を修正してます。

 

古民家の壁には土で作られた壁が用いられています。塗り壁、左官壁(さかんかべ)、日本壁など様々な呼び方がされていますが最も一般的な名前は土壁(つちかべ)でしょう。

 

土壁の土はその土地や風土で特徴があり、それらを生かすために地域によっては室内側と外部とで土を替えたり、土作り気候に合わせて作業の時期も替えたりしていたようです。基本的には土に藁(わら)などを練り込んでそれをしばらく寝かせます。藁の練り込み方も藁をそのまま切ったもの、藁をもんで軟らかくしたものなどと用途に合わせて使い分けます。

 

まず土と藁に水を加えて練り混ぜる事を水合わせと言います。山や池の底などから採取した粘性の高い土に切った藁を混ぜ一定期間置いておき、それから壁に使用します。寝かせておく事で藁が腐り、藁の繊維質が土となじんで粘りのある土になるからです。古い土壁は粘性が落ちているものの、新しい土と混ぜる事で再使用する事が出来ます。土を寝かせる期間は様々ですが、藁の発酵を促すには低温では難しいため「土は夏の土用を越させてから使え」などと言われます。

 

藁を練り込む目的は、壁の補強や亀裂の防止、曲げ強度の向上など壁としての強度を向上させる補強材としての役割と、塗る時の作業性を向上させることもポイントとなります。塗り壁材に弾力性を持たせ作業に使う鏝(こて)の伸びや鏝ばなれを良くする働きがあり、藁による保水効果も期待できます。この練りこみに使う藁を「すさ」と呼びます。なお藁に よって土を補強する事は古くから行われており、日干し煉瓦などにも藁が練り込まれていました。壁への塗り方は、ます竹などを材料として小舞(こまい)と呼ばれる格子状に組んだわら縄で固く組み上げた枠を作ります。

 

 

 

竹にも種類がいろいろありますが、土壁に向く竹の種類は真竹か篠竹(しのただけ)と呼ばれる竹で、日本の竹林のほとんどはタケノコとして食べやすい中国から来た孟宗竹(もうそうちく)ですが、孟宗竹は虫が付きやすいために土壁の材料には向きません。竹は成長したものを10~12月頃の寒い時期に伐採して使用します。

 

 

 

土壁をつけるための小舞の作り方は、柱に小さな差し込み穴を開けて間渡し竹と呼ばれる丸竹や割った竹を45cmから60cm程度の等間隔で渡し、さらに一回り小さな竹で方眼状にシュロ縄などで結んでいきます。小舞は一般的には竹を使う事が多いですが、竹の代わりに木を使った木小舞下地(きごまいしたじ)や木摺り下地(きずりしたじ)と呼ばれる4cm以下の幅で厚みも7mm程度の杉の板などを7mm程度の隙間を開けながら水平に間柱などに打ち付けていく下地もあります。ただし木摺り下地の場合は土壁を作るというよりは、その上に漆喰などを5回程度塗り重ねて仕上げて左官壁の下地とする明治以降の洋風建築で用いられた施工法で、壁の内部が空洞となる場合があります。

 

小舞下地が完成したら、組んだ小舞の裏側に迄はみ出すように強く押し込むように塗る「荒壁塗り(横付け)」をおこないます。これは土壁の最下層の下地で古民家の構造の一部となる部分でもあり下塗りとも呼ばれます。荒壁には特に粘性の高い土が必要で、関東から東北に分布する灰褐色の荒木田土(あらきだつち)という粘土は有名です。

 

次に裏面にはみ出た土を撫でつけて裏返し土を塗りやすくする「裏なで」、反対面の壁に土を付ける「裏返し」をおこないます。

 

土壁を塗る際には最終的な仕上がりの厚みを計画して柱などに仕上がりの線を印てから作業に掛かります。この仕上がりの線を散り墨(ちりずみ)といいます。普通12cm程度の柱の場合、柱の前から1/4から1/5下がった所が壁の仕上がりにする事が多く、柱に印を付ける「墨打ち」をおこないます。

 

土の乾燥するのを待ってから荒壁土の上に乾燥収縮の隙間を埋めながら塗り重ねる「むら直し」をおこないます。貫の部分は塗り厚が薄くなるので特に藁などで補強しながら塗るため「貫伏せ」とよばれます。 

 

柱回りの際を整える「ちり直し」などを経て次に「中塗り」をおこないます。

 

中塗りの目的は上塗りの下地となる平滑な面を作りながら耐力壁としての強度を確保する意味もあり、昔から「一回の塗り厚は薄く。工程は多い程良い」と言われるのが土壁造りであり、完成まではある程度の時間がかかります。

 

中塗りがおわれば最後に最終的な仕上げとなる上塗りをおこないます。土壁のまま仕上げる場合もあれば、漆喰などで仕上げる場合もあります。

 
次週も続きます…