竹小舞下地土壁塗りについて Ⅱ

13日の続きです。

 

土壁の家は地震に弱いと思われる方も多いのですが、本当にそうでしょうか。

建築基準法で壁の強さを表すものとして壁倍率というものがあります。壁倍率とは長さ1mの壁に200kgの水平力が働いた際の層間変位角(水平の変形量)が高さの1/120を1としてその倍率で表されます。土壁の壁倍率は以前0.5という数値でしたが、建築基準法告知の改正により現在は土壁の塗り厚みと両面、片面の仕上げ等により1倍から最大1.5倍の壁倍率を得る事が可能です。

 

古民家の場合には壁の片面にしか土壁を付けていないものもありますが、壁の強度を考えると両面に塗られたものの方が当然耐震性は高くなります。また、両面土を塗る事で小舞の竹が空気に触れなくなり、腐食から守る役割もあります。

 

土壁に水平力がかかった場合土壁は隅角部の圧縮力、貫が土を引き裂くように働くこじり抵抗、壁土のせん断力抵抗などと軸組仕口のめりこみやモーメント抵抗と合わさり抵抗し、地震の際には地震初期は隅角部にひび割れや破壊が発生することにより修復は必要だが大きな破壊は起こりにくいという伝統構法の軸組みの考え方に合うものです。

 

漆喰を使った上塗りの仕上げの種類としては、漆喰磨き仕上げ(しっくいみがきしあげ)などがあり、漆喰を上塗りした後に紙すさを入れた粒子の細かい漆喰のノロを作り、鏝や手で押さえながら表面を限りなく平滑に仕上げる事でまるで鏡のような肌さわりに仕上げる方法がある。通常の漆喰仕上げより耐久性や耐水性にすぐれ美しい仕上がりになるが、それだけに職人に要求される技術も高い物が必要です。

 

大津壁(おおつかべ)は色土に石灰を混ぜ合わせたものを用い、色土の種類により様々な色が出せ、なおかつ漆喰に近い強度が出せる壁で座敷などに使われました。鏝で仕上げる並大津と、ノロを最後に塗り重ね表面を濡れた布で拭き取る雑巾戻し(ぞうきんもどし)と呼ばれる方法で鏡のように磨き上げた大津磨き仕上げとに分類されます。

 

その他に、表面を鏝や節目のある専用の鏝で横に引きずりながら凹凸を付けた引摺り仕上げ(ひきづりしあげ)や、掻き落とし仕上げ(かきおとししあげ)と呼ばれる石粒状の粗面に仕上げる方法など多種多様な表現が使われています。

 

ここまで手間をかけても土壁を作るのはそれに見合うメリットがあるからで、土壁の特徴は防火性、断熱性、遮音性、吸放湿性、耐久性に優れ、高温多湿の日本の気候風土に合うという点です。特に最近は断熱性能と調湿性能が注目され、室内を外気温の影響を受けにくく、温度と湿度の変化を一日中穏やかにすのるという事が証明されています。また、自然素材で健康にも良い体に害のない材料ですので安心して使う事ができます。ただ、現代よく使われるビニールクロスなどの材料と比べるとやはりコストアップになることと工事期間が長いのが難点でもあります。でも土壁は耐久性も高く、最終的にはまた土に還る訳ですから究極のエコ材料でもあります。