石場建てを含む伝統構法木造建築物の設計法報告会

今日は教本から離れて、7月12日、滋賀県の立命館大学で開催された「石場建てを含む伝統構法木造建築物の設計法報告会」の報告を…定員300名の会場は立ち見が出るぐらい超満員で石場建て構法での新築をする事への関心の高さが感じられました。

 

報告会では過去5年に渡り開催した実動大実験などのデーターの紹介と、それに基づき今回発表された3つの設計方法の内2つの説明がされました。設計の基本は、せん断耐力≧作用せん断耐力(必要保有水平耐力に該当)をうわまらないようにすることで、設計方法は、一般住宅を対象に新しく策定された仕様規定(床はこういう材料をこういうふうに施工しなさい)を使用した一般設計法、寺社仏閣などへ対応出来る詳細設計法、そして今回は割愛されましたが時刻歴応答解析(限界耐力計算)による汎用設計法の3つのアプローチが示されました。

 

3つの設計法に共通する骨子は、伝統構法の(この報告会では伝統的構法と呼ばれています)大きな変形性能を生かす為に、損傷限界変形角を1/90rad(rad=ラジアンは、国際単位系 (SI) における角度(平面角)の単位で「円の半径に等しい長さの弧の中心に対する角度」と定義。円周上でその円の半径と同じ長さの弧を切り取る2本の半径が成す角の値と定義される)、安全限界変形角を1/20radに設定しています。

 

また、伝統構法の特徴でもあり関心の高い、柱脚(柱の根元部分)部分の設計方法は、

 

1、上下・水平拘束の土台形式(基礎と土台を固定)、

 

2、水平方向拘束・上下をフリーにした土台形式(土台は基礎に固定されるが、柱と土台は拘束されず、上下に150mm程度フリーに動く事ができる)、

 

3、水平方向拘束・上下をフリーにした土台形式でダボを柱と土台の接合に使用し、土台と基礎をアンカーボルトを差し込んで水平方向は固定するが、ナットを止めずに上下を固定しない(上下に150mm程度フリーに動く事ができる)という在来工法の延長線上で考えやすい3パターンと、

 

4、石場建て構法の礎石の上に柱を建てる水平・上下フリー石場建て形式(地盤面と礎石天端の高さは100mm以内とし、礎石と柱の摩擦抵抗を検討する)、

 

5、柱脚は土台に緊結し、土台を礎石に載せる水平・上下フリー土台形式などについてまとめられています。

 

古民家の場合は示された中の一般設計法の仕様規定を用いて設計者が検討を進める必要がありますが、どうしても安全側で設定がなされているためハードルが高く、また仕様規定の根拠への説明が不十分などと質疑応答では実務者が使用するには更なる検討が必要との意見もでましたが、今迄伝統構法は揺れて地震の力を逃がす免震的(免震と制振の中間に位置する構造)な構造だとは理解していてもその具体的なデータが無かったわけなので、一定の条件下ではあるものの実動大実験をして頂いてデータを示してもらった意義は非常に大きいと思います。

 

まだまだ精査が必要な内容ですが、この設計法が確立される迄は改修の場合、伝統再築士と協力して伝統再築士の方にはお伝えしている準耐力壁、上屋・下屋の考え方、足固めの設置などを利用した再築方法で少しでも古民家が残せるように皆様にも頑張って頂きたいと思っております。