八の三 古民家鑑定書の評価項目とは


P492 古民家鑑定書は現在の状態をチェック項目に沿って目視で確認して減点法で評価して行きます。

 

新築と同じような状態であれば100点でありそこから痛んだ部分やへたってきた部分などを確認していきます。古民家鑑定の調査項目は476項目、古民家鑑定は減点法で評価。古民家の現在のコンディションと価格、それに上記の八角形のチャートと予防保全計画書などが表示されます。古民家鑑定書を受け取った所有者は家の歴史、家歴を残して行く役割も担う事になります。


古民家鑑定書に記載される項目は8種類、その項目は、

 

1、周辺環境適法性

生活空間として近隣の環境はどうか、住み易さの指針であり、また現在の建築基準法に照らし合わせて形態や法規にどれぐらい適合しているかを表します。ただ耐震については現行法では伝統構法の耐震基準が明確には示されておらず、在来構法の壁料計算による計算ではほとんどの古民家は耐震基準を満たしていないという結論になりますのでここでは加味しないようにしています。


2、環境性能

古民家などの伝統構法住宅は同時に自然素材住宅でもあります。自然素材は循環型の建築資材であり、廃棄されたとしても最終的にはまた自然の一部になります。環境負荷を限りなく少なくするという観点で循環型自然素材を多く使っている程廃棄物が将来に渡ってあまり出ないという部分の評価となります。これは築年数が浅い住宅程点数が悪くなります。


3、構造躯体

構造躯体とは骨組みの事を指します。骨組みにどんな木材が使われているか、どのような組み立て方をされているかと現在の痛み具合で今後どのくらい使用する事が出来るかを考えて評価します。長期間使用可能かどうかの長期耐用性と数値的なデーターは古民家鑑定では出ませんが有る程度の耐震性の有無は評価されます。伝統構法住宅の耐震性能については早稲田式動的耐震診断法という評価方法があります。これは簡単に説明すると、建物は常に微弱な振動をしています。風や道路を走る車の影響や、室内を歩く人によっても感じないぐらいの微振動を絶えずしています。これを庭に置いた地震計と室内に置いた地震計で一定時間計測し、外的要素(車が通った際の振動など一時的なもの)を覗いて振動を増幅し、地震が発生した際に建物がどのように揺れて倒壊するかをシュミレーションするものです。元早稲田大学理工学術院教授 現在は一般社団法人伝統構法耐震評価機構の理事である毎熊輝輝先生が生み出した方法です。


4、屋根

屋根は雨や日差し、風などから中にいる人を守ってくれる重要な部分です。しかし屋根は夏場は70度ぐらいまで温度が上昇したり、冬場は雪がつもり大きな荷重を受けるなど痛みやすい部分でもあります。屋根の現在のコンディションを把握する事は大切で、コンディションを把握する事で今後のメンテナンスのスケジュールを立てる事ができます。


5、外壁

外壁も屋根に並び重要な部分であり、また家の雰囲気を表現する為に様々な素材やデザインが施された部分でもあります。外壁は美観的な見た目と雨などを防ぐ機能面の両方の視点からコンディションを把握する必要があり、メンテナンスも美観的視点と機能的視点の両方でスケジュールを立てる必要があります。


6、基礎

基礎は地面に家が接する部分であり構造と並んで重要な部分です。木材の欠点は腐朽(腐る事)とシロアリでありその両方が地面と深く関わって来ます。基礎や床下の状態を把握する事で家のコンディションが解ります。床下の湿気やシロアリの蟻害の有無や風通しなどを確認します。

 

7、内部

内部は人が生活する空間でありここがいかに快適かで住み心地も大きく変わります。古民家の場合長年空き家になっていた為に室内が荒れ放題になっていたり、雨漏りで腐っていてとてもそのままでは住めない状態のものもあれば、ピカピカに手入れされていてそのままで快適に暮せるものなどまさに千差万別です。住まれておられる方から見ればいい状態でも実はとんでもない問題が有ったりする場合もあるので、古民家鑑定士が第3者の冷静な目で評価をおこないます。また評価の内容は重要文化財だとかの希少価値や、高価なものを使っていたり、凝った仕上げでお金がかかっているからいい評価になると言うものではなく、住まうに当たってそのまま住めるものか、あまり費用を掛けずに住めるかという観点で評価されます。あくまで古民家に住む事を目的にしており骨董的な価値はあまり反映されないという事を覚えておいてください。

 

8、予防保全計画

古民家を長く使って行く為に現在のコンディションを保全して行く為に必要なメンテナンスの必要性をコストと照らし合わせて評価します。出来るだけお金をあまり掛けずに今の状態を長く維持出来るほうが評価は高くなります。またここでの評価を元に古民家鑑定書には予防保全の為の計画書が付けられます。


古民家鑑定書は古民家の現在のコンディションと価格、それに上記の8つの項目を八角形のチャートとして表示し、今後30年間のメンテナンススケジュールを示した予防保全計画書などが表され、更に今後所有者が自らメンテナンスの実施とその内容や、増改築などの記録を記入していく為の用紙も付随します。つまり古民家鑑定書を受け取ってから所有者は家の歴史、家歴を残して行く役割も担う事になります。家の歴史を書き留めていく事で鑑定書の精度は高まりますし、将来大きな改装や再生をする場合にも重要な情報となるのです。