八の五 早稲田式動的耐震診断とは


P498 建物は常に地震発生時以外に置いても微細な振動を受けて建物自体も振動を起こしています。

 

正確には交通機関や各種機械などから人為的に受ける振動や、風や波浪などの自然現象に基づき地盤が小さな振動をしています。早稲田式動的耐震性能診断はこの微細な地盤の振動と、それに起因する建物の振動を同時に計測しその振動データを解析処理する事で建物の振動特性値を求め地震の際に建物がどう地震応答での振動をするかを推測し、耐震補強に役立てる方法です。

 

実際の計測は地震計を建物近くの地盤面と、建物中央部の2階床面に水平直角方向に建物の短辺方向、長辺方向に設置して数分間振動を測定、これを3回繰り返しデータを収集して解析を行います。


在来構法と伝統構法では当然ながら振動特性は代わり、伝統構法のほうがその固有周期は大きくなります。これは在来構法では構造要素の壁を多く設けて強度を確保しているいわば「剛構造」の建物となり、伝統構法の建物は壁がほとんどない「柔構造」の建物であることの表れです。


伝統構法の建物は水平方向に変形しやすく、大きな変位の振動で振動する場合でも木材が持つ復元力を活かせる構法であるため在来構法の建物に比べて破壊しにくいしなやかな性質の構造体です。

このしなやかさを上手く活用した耐震改修を行うためにも一般的な壁量計算などの静的耐震診断よりも動的なこの耐震診断でシミュレーションする方が自然な耐震改修が行える可能性が高いと推測され、動的耐震で得れた耐震性能情報を元にどのような耐震性能を持たせた設計クライテリアを描き、その条件を満たす改修方法を明確に提示できるかという問題と、その改修方法が現行の建築基準法上で示された基準をクリアしているかの証明であろうかと思います。


改修方法に関しては現行の基準法内での対応という点で検討するならば金物に頼った対応になり、本機構が提案する金物の基準、設置箇所などの設計が既存伝統構法住宅の耐震改修のスタンダードとなっています。