八の十三 屋根の調査項目について


P548 夏場屋根の上の温度は瓦の場合約70度にまで上昇すると言われています。また冬は雪の重さに耐えなければなりません。屋根は建物の中で最も過酷な条件に晒される部位です。また簡単な修理は別として屋根の仕上げ材の葺き替えなどの場合は100万円を超える費用がかかります。住宅を長持ちする為に屋根の状態は重要なポイントです。


藁葺き、茅葺きの屋根は古民家らしく、いわば日本の原風景というイメージです。藁葺きと茅葺きの違いは材料の違いで、藁は稲藁や麦藁などで葺いた屋根になります。茅葺きは山茅としてススキやカリヤス、海茅としてアシやヨシなどを使います。地方により地元にある材料を使っており、茅場という場所で昔は生産されていました。茅に比べると藁は耐水性が劣り、普通は茅葺きの代用品という感じです。藁や茅意外の植物で葺かれる場合もあり植物の名前が解らなければ草葺きと呼んだりします。茅葺はもっとも原初的な屋根とされ、縄文時代から使われている。奈良時代以降は板葺や樹皮葺なども使用されるが、登呂遺跡などの弥生時代の竪穴式住居などの屋根は通常茅葺で復元されます。


ドイツやデンマーク、オランダなどでは茅葺きは裕福な象徴的な意味もあり、いまでも新築で使われる事が多いようです。


茅葺きは茅場などが無くなり材料の入手が困難になったと共に職人もいなくなって来ています。そんな状況からか茅葺き屋根の場合葺き替えるのではなく、上からトタンなどで覆う補修方法が一般的である。トタンではなく瓦などに葺き替えたいと思われる方も多いが瓦屋根に比べ茅葺きは勾配が急勾配のため瓦屋根にする場合は小屋組から改修する必要がある。


P550 瓦屋根である。瓦とは粘土を焼成したものでスタイル・用途・焼成法・色・等級・産地など様々な1000を超える種類が、特に鬼面が施された鬼瓦(おにがわら)や軒丸瓦先端の円形部分の瓦当(がとう)などは芸術品として評価される事も有ります。製法は大きく分けると、釉薬を使用するものと、釉薬を使用せず素焼きにする無釉薬瓦に分けられ瓦が葺かれた屋根を瓦葺(かわらぶき)や甍(いらか)と言い、瓦の主な産地としては愛知県の三州、島根県の石州、兵庫県淡路島の淡路が三大瓦産地と呼ばれています。
瓦の施工法は、古い住宅の日本瓦屋根は、土葺き工法という方法で工事されます。 屋根下地と瓦を葺き土と呼ばれる土で固定する方法です。 現在、日本瓦屋根の住宅で最も普及している施行方法は引っ掛け桟工法と呼ばれるものです。屋根下地に木材の桟を一定間隔で取り 付け、瓦一枚一枚についている爪をこの桟に引っ掛けて重ね合わせます。これも以前は瓦を桟に引っ掛けて重ねるだけで釘や金具を使いませんでしたが、現在は瓦を引っ掛けてから釘で固定するのが一般的です。釘で固定するものを防災瓦などと呼んだりします。


P555 簡素で軽快な垂木構造の小屋組である。合掌作りなどの構造を指します。合掌造りとは小屋内を積極的に利用するために、叉首構造の切妻造り屋根とした茅葺きの家屋と白川郷と五箇山を世界遺産に登録する際に定義された。両手のひらで三角形を丸太などで組んだ急勾配(45度から90度程度)の屋根で茅葺きで叉首構造が特徴である。叉首構造とは2本の丸太を棟で交差させ梁の両端に差し込んだ和風トラス構造になる。屋根は梁からしたの構造と一体となっている訳ではなく、ヤジロベイのようにバランスを取っています。


寄棟などの場合に四隅の梁が捻組されており強固な構造である。捻組(ねじぐみ)とは組手の種類で通常直行する部材通しを組む場合には合欠きと呼ばれる方法で相互の部材の半分を切りとり合わせるが捻組は上下の部材の接肌(つぎはだ)が水平になっていないものを指します。