巻の参 古民家の各部位…


参の一 屋根

古民家の屋根は谷崎潤一郎は西洋建築の屋根が帽子であるのに対して古民家は傘と表現しているように建物のデザインや機能を考える上で重要な意味を持つ部分でもあります。

P123のポイント部分に日本の気候の過酷さと屋根に必要とされる条件などを記しています。

 

屋根の構造を知る為に、P124 屋根の形状と名称は覚えておく必要があります。また屋根の角度は屋根の仕上げ材の種類によっても決まっており、屋根葺き材は1枚が長く大きいもの程勾配は緩くする事ができます。古民家の屋根で多いのは瓦葺きと茅葺きかと思いますのでそれぞれの勾配は覚えておきましょう。

 

瓦屋根 4寸以上(現実的には4寸5分以上です)

茅葺き 矩勾配(かねこうばい)10寸勾配、角度で言うと45度以上は一般的です。

 

P125 瓦屋根を屋根下地の野地板の上に葺いていく場合、瓦を重ねながら葺いていくので瓦の厚みにより角度が変わります。下地の角度より瓦表面の角度は緩くなります。これを瓦の戻り勾配といいこれを考えて下地の勾配を考えないといけません。

 

P125 照り屋根、起り屋根

お寺や神社等の屋根や、古民家などの屋根をよく見ると屋根の流れ方向にカーブがついています。棟から軒先に向かって途中が凹んでいるものを照り屋根(テリやね)、逆に膨らんでいるものを起り屋根(ムクリやね)と言います。P126イラスト参照

照り屋根は反り屋根とも言われ、社寺や城閣に多く、やや威張ったイメージになります。

 

照り屋根は軒先に行くに従い勾配が緩くなるので軒先部分での雨漏りに注意をする必要があります。起り屋根の場合は逆に軒先に行く程勾配がきつくなります。

 

屋根の妻手には破風が回りますが、屋根にカーブがついていると当然破風もカーブを付ける必要があります。照り屋根の破風は照り破風(反り破風)と言われ、屋根よりも深い反りを造るに半ばを下げ、軒先を上げる事が多い。ところが、そうすると屋根と破風で曲線にギャップが生じるので、そのギャップを調整するために屋根から妻にかけて屋根を微妙に曲げ降ろすことになるが、この調整曲面部分を蓑甲(みの甲)といいます。古民家等で一般的にみの甲の家などと言う場合はかなり上質な仕上げをされたお金がかかっているという意味になると思います。

 

 

P131 瓦の製法による分類

 

瓦は製法により大きく分けて

1、いぶし瓦

2、釉薬瓦

3、塩焼き瓦

4、無釉瓦

5、ガラス瓦に分類出来ます。古民家の場合、いぶし瓦が多いですが、地域により釉薬瓦や塩焼き瓦なども使われています。いぶし瓦、釉薬瓦、塩焼き瓦、無釉瓦の製法の違い等を確認しておきます。

 

形状による分類は古民家の場合は本葺瓦か、J型瓦と呼ばれる和形が多いです。

 

P140 瓦の産地

瓦は日本全国で生産されていますが、大量生産されている産地としては三州(愛知)、石州(島根)、淡路(兵庫)が有名ですがそれ以外でも有名な産地をP140〜P142に記載しています。それぞれの産地の特徴を読んでおきましょう。

 

P142 植物系屋根材

茅葺きや藁葺きの草葺き屋根と、ヒノキや杉の樹皮を使用する樹皮葺き、そして板葺きに植物系屋根は分類されます。

草葺き屋根に使用されるのは、カヤ、ヨシ、アシ、麦ワラ、ワラ、麻穀(あさがら)エゴノキ科の落葉高木で本州中部以西の山地に自生しており材は軽くて柔らかい、篠(しの)茎が細い群がり生えるメダケ・アズマネザサなどのタケササ類の通称などが使われます。

 

樹皮葺きの屋根には社寺建築などで多いヒノキの樹皮を使う檜皮葺き(ひわだぶき)と、民家でよく使われる杉の樹皮を使う杉皮葺きがあります。

 

板葺きは、杉の柾目、サワラ、ヒノキなどがよく使われますが、板の厚みにより、厚み3mm程度の杮葺き(こけらふき)、4〜6mm程度の木賊葺き(とくさふき)、10mm程度のトチ葺きなどと分類されています。

 

参の二 礎石について

P147 現在の在来工法はコンクリート製の布基礎やベタ基礎が一般的ですが、古民家の場合は自然石の上に柱を建てた石場建て工法が一般的です。建物の基礎に石を使う事を礎石(そせき)造りと言います。

 

自然石の上に柱を建てる場合には柱の端部を自然石の形に合わせる必要があります。自然石の形に合わせて柱を加工する事を光付け(ひかりつけ)と言います。

 

石場建て工法は、力学上も構造の計算が非常に困難で、それが伝統構法が現代では難しく確認申請等も許可が取りにくい障壁となっています。国交省でも石場建て工法などの設計の簡素化の為の研究を行っていましたが、現状明確な答えが出ていません。自然石の上に柱を載せているだけという工法は、地震の際には柱が移動したり浮き上がったりします。古民家が地震の際に倒壊しないのはこの基礎形状による部分もおおきいのですが、その減少の解明がまだ出来ていないのです。

 

それだけ先人達の工夫や経験は現代の知識よりも深いという事でしょうか…

 

参の三 室礼(しつらい)と間仕切り

P150 開放的な日本建築は、「しつらい」をすることで季節の変化や状況の変化に応じて工夫してきました。

室礼とは平安時代に生まれた日本語で、本来、無個性な部屋をちょっとした道具等でその時々の用途や目的に合った空間に変えるという先人の知恵からきています。例えばゴザや畳、ついたて、びょうぶ、床の間の掛け軸や花、収納台などがこれにあたります。

 

間仕切りとは、間(ま)仕切るという事で、部屋の配置や構成などを表します。間とは柱と柱の間を指し、その柱により組まれている屋根の下の空間を仕切りと言います。なぜ、その空間を「仕切り」というのかというと、木造建築と西洋建築の建て方の違いに理由があります。西洋建築では、各室を先につくり最後に屋根をつくります。それとは逆に、木造建築では先に屋根をあげてしまうため、そこに空間ができるのです。「間仕切り」という言葉は、実に日本建築の空間的特性そのものをあらわしており、日本の気候、風土から生まれた言葉です。そして、このような自由で開放的な木造建築の空間構成にリズムを与えてきたのが柱寸法や柱の間隔です。

 

古民家と現在の住宅を生活様式の違いから比較すると、それぞれの個性がはっきりとしてきます。

伝統的な住宅の特徴は和室がメインで、和室には床の間や押し入れ、縁側などがある日本式の起居様式(ききようしき)といわれます。

 

現在の近代的な住宅は洋風の椅子を使った起居様式で、食事と就寝の分離、居間の確保(お客様中心ではなく、そこに住む家族が中心)へ個室の確保などプライバシーを大切にする、言わば空間を機能で分化する考え方です。

参の四 床

P153 床は生活をする上で重要な部分で、地面からの寒さや湿気などを防いだり生活の質の向上にかかせない部分す。伝統的な古民家の床の仕上げと言えば板張りと畳が一般的で、畳の畳表の材料はイグサであるが、日本でイグサが使われ出したのは平安時代である。畳が部屋全体に敷き詰められるようになったのは室町時代の武家屋敷が初めとされるが、畳が規格化されたのは16世紀末、京都が最初といわれています。

 

板張りの床は、畳の下に下地として使われる荒床と、板そのものが仕上げとなる縁甲板がある。縁甲板の場合には板の長手方向に接合の為の加工がなされており、本実矧ぎ、雇い実矧ぎ、相决り実矧ぎ、突付け矧ぎなどがあります。

 

畳は、古事記や日本書紀、万葉集などに「管畳」、「皮畳」「絹畳」といった記述で登場しており、敷物の総称として、畳めるもの、重ねるものという意味がありました。現存する畳の最古のものは奈良時代の奈良正倉院にある聖武天皇が使用したとされる「御床畳」(ごしょうのたたみ)という木製の台の上にムシロを5〜6枚敷いたベッドのようなものでした。

 

平安時代に入り寝殿造りの建物で板敷きの座具や寝具として部分的に畳が置かれるようになり、鎌倉時代から室町時代に掛けての書院造りにおいて部屋の周囲に畳を敷き真ん中を残す使い方からやがて部屋全体に畳が敷かれるようになりました。桃山時代から江戸時代に掛け茶室の発展と共に数寄屋造りが表れ、炉の位置に合わせた畳の敷き方となり、同時に正座などの日本独自の座り方が一般的になったとされています。江戸時代になると「御畳奉行」という役職が作られ武家に取っては畳は重要なものでした。

 

江戸中期になると庶民にも畳が一般的となりましたが、農村にまで普及するには明治時代迄かかったようです。

 

畳の大きさは京都では一定の規格の畳に合わせて柱の間隔を決めていく畳割りという方法が用いられ、6尺3寸(1910mm)の畳の大きさに対して6尺5寸(1972mm)が1間となる京間使われ、江戸では柱間6尺(1820mm)を1間とする柱割りが編み出され、関東間となりました。京間は畳の大きさで建物を造っているので畳を別の部屋に運んでも使えますが、江戸間の場合は部屋の大きさによって畳の大きさが違ってくるので畳の転用ができません。

 

 

参の五 天井

P158 天井とは室内の上部を構成する部位の総称である。現在では小屋組みや床組みを隠すために張るという意味合いが強いが、室内の温度調整を容易にし、屋根からの塵や埃を防ぎ、心理的な落着きを与えることにも役立っている。一方、屋根裏空間の有効利用や化粧屋根裏天井のように、小屋組みをそのまま意匠として見せる天井もあります。

 

天井の形状の色々をイラストで書いていますので確認下さい。

 

 

参の六 壁

P164 古民家などに使われる壁は土壁に漆喰を塗ったものや板などで仕上げたもので柱が見える真壁造という構法が一般的です。

 

P165 面は、柱や梁など、角断面の材の角を斜めの平面を削り取って生じた表面のことをいい、また面を加工することを面取りといい、材の角部の保護と意匠的な意味合いで行われます。面は取り合う内法材の寸法や取付け方法などにも影響を与えるため、部材同士の取合い部の納め方も同時に検討する必要があります。

 

納め方は大きく3種類に分かれ、

敷居や鴨居などの内法造作材を柱の面の内側に取り付けるのが面内、

面の途中に取り付けるのが面中、

面づら(面一)に取り付けるのが面ぞろです。P166にイラストを掲載しているのでどう違うのかを確認してください。鴨居は面内で納め敷居は畳の場合は面ぞろ、板の間の場合は面内で納めるのが一般的です。

 

P166 鴨居とは襖や障子を始め引戸を設ける場所の上部にあって、建具開閉のための溝を突いた横木の事であり、溝が掘られて溝に襖や障子が入れられますが、障子と襖では溝と溝の間隔が変わります。溝と溝の間隔をみれば建具の種類が分かるのです。

 

障子は四七の溝、襖は三七の溝が一般的に用いられます。寸法などはP167で確認してください。

 

壁の仕上げは左官塗り壁が一般的に使われます。

 

左官塗り壁は、伝統的に当たり前の工法として用いられてきたものであるが現在は少なくなっています。

その元来の形は、柱に貫を通して構造を固め、竹小舞を配して土で塗り込める土壁塗りでしたが、時代とともにより平易で手間のかからない工法や材料が普及し、下地についていえば竹小舞に代わって木摺り下地ラス網張り、石膏ラスボード張りへと変遷し、塗り材は土や砂、消石灰といった天然素材に代わって合成樹脂を基材にした材料が主流をなすようになりました。

 

左官材料は、硬化特性から気硬性材料と水硬性材料に大きく分類でき、気硬性材料は空気中で乾燥・硬化するもので、土壁や漆喰などがあり、水硬性材料は水と化学反応を生じて硬化するもので、石膏プラスターやモルタルセメントなどがあります。

 

一般に左官材料に要求される性能としては、可塑性・付着性・硬化性・硬化後の靭性・美観性・耐久性などが挙げられます。

 

P173に左官塗り壁の工程を書いているので確認下さい。下塗り、中塗り、上塗りなどと複数回に分けて仕上げていくのが一般的です。

 

左官仕上げは土壁のままもあるが、漆喰などを土壁の表面に塗って仕上げる事が多い。

P175から漆喰の種類に触れています。色漆喰、土佐漆喰や漆喰ではないが聚落、珪藻土などの種類を覚えておきます。

 

P178 漆喰の仕上げとして装飾的に建物外部に用いられる海鼠壁(なまこかべ)や鏝絵(こてえ)などがあります。

外壁の腰周りなどに平らな瓦を張付けて目地を漆喰でかまぼこ状に盛り上げて仕上る壁の事を海鼠壁といい、壁面に漆喰と鏝を使い立体的な図案を描いたものを鏝絵といいます。

 

参の七 床の間

P180 床の間とは、「座敷の上座に設けるもので、床を一段高くし、正面の壁に書画を掛け、床板の上に置物、花瓶などを飾る所」であり、床の間のデザインを分類するには「真(行)の床の間」とか「草体の床の間」といった言い方をする。この「真」「行」「草」とは書における楷書・行書・草書と同じで、正式で格式の高い形からいかにくずしていくか、その程度を表している。その基準は極めて曖昧で主観的なものだが、床構えの形から考えれば、床の間・床脇・書院が揃っているものが「真」、床脇・書院のいずれかを省略したものが「行」、床の間だけのものが「草」とする考え方がある。また使用する部材も異なっており、P181に一覧表にしています。

 

床の間の各部位の名前は覚える必要があり、それぞれの意味も覚えて下さい。

 

本床

正式な床の間の形式を本床という

 

框床

座敷の畳面から床の間を一段上げるために床框を置いた形式のものの総称

 

蹴込み床

床框を省き、床板の木口を見せて、その下部に蹴込み板を入れて床の間を一段高くした形式

 

蹴込み式框床

框床と蹴込み床のミックス

 

踏込み床

床框を用いず、座敷の畳面と同じ高さに地板を入れた形式を踏込み床という。「草」の範疇に入る。

 

床柱

床の間の脇に立つ化粧柱で、材種、形状としては、ヒノキ・マツ・ツガなどの柾目の通った面取りの角柱が本式で、ほかに角柱として用いられる主な材種には、スギ・ケヤキ・キリ・カエデ・クワ・クロガキ・コクタン・シタン・タガヤサン・イチイ・エンジュなどがある。また、床柱の表面を加工したものもあり、柾目のほかに杢目も用いる。少しくだけた雰囲気をもつスギの絞り丸太・磨き丸太・面皮柱、アカマツなどの樹皮を取って磨いたものやクリのなぐりもよく使われる。

 

また、茶室の床柱として人気のあるアカマツ皮付き丸太、ほかに皮付き丸太ではサクラ・ツバキ・コブシ・ウメ・サルスベリなどがあり、竹類では真竹・図面竹・亀甲竹・錆竹・晒角竹などが用いられる。床柱の太さとしては、角柱のときは座敷の柱の1.1倍くらい、丸柱のときは末口が同寸、目通りでは1.1~1.2倍くらいが目安である。なお、丸太材は、床柱に限らず、元口と末口の差が少ないものがよいとされている 。

 

落し掛け

床の間前面上部の小壁下端に架け渡した横材を落し掛けという

 

床板

床框を入れ、これと同一面に地板を入れた床の間を板床といい、この地板が床板です

 

床脇

床の間の横に作る違い棚や、地袋などで構成される空間 

 

天袋

床脇に付けられる。天袋は元は戸のないオープンな通り棚で、後から戸が付けられるようになった。天袋の建具には小襖が使われ、天袋幅が半間のときは2枚引違いとなるが、1間幅のときは4枚引違いとなる

 

地袋

下部の棚に建具が付いたものを地袋という

 

違い棚

昔は横一文字の棚で実用本位のものであったが現在は装飾性も持たされ2段になっている。桃山時代の書院造り最盛期から江戸時代初めにかけて、上部に天袋、その下方に違い棚または清楼棚が付く形が床脇の代表的な形式となった

 

海老束

違い棚などで上下の棚板をつなぐ束を海老束または雛束という

 

筆返し

棚板の端部に付けて、筆などが転がり落ちるのを止める役割がある

 

付書院

付書院は床の間脇の縁側沿いにある開口部で、座敷飾りのための場所である

   

妻板書院

付書院を書院柱ではなく、厚さ5分(15mm)ほどの一枚板で支える形式が妻板書院である

 

取込書院

書院を床の間の手前ではなく、床の間の庭側壁部分まで取り込んで配置する形式のものを取込み書院あるいは駆込み書院と呼び、付書院・平書院のいずれにおいても使われます。取込み書院にすることによって床の間内に外光を取り入れることができます。

参の八 建具

P190 古民家は壁の少ない構造であり、各部屋の仕切りは板戸、障子や襖などさまざまな建具が使われています。いずれのものも現在では再現が難しいようなものが数多く使われているので大切に使えるものは残して行きたいですね。

 

P190 桟戸

主として周囲の枠組の部材強度と接合強度に頼って固められる建具を框戸と呼ぶの対し、建具を軽くするために、周囲の枠組を細くする代わりに、その内部に補強のための細桟を数多く入れた建具を桟戸と呼びます。

主な種類は、舞良戸、格子戸、雨戸、簀戸など。障子も桟戸の種類となります。P190のイラストを参照

 

 

舞良戸

舞良戸の桟は舞良子(または舞良桟という)と呼ばれ、奇数本入れることを原則として、片面だけに横に入れた舞良子に縦に3~4枚矧ぎとした厚さ6mm程度の薄板を釘留めしてつくられる、横舞良戸が一般的なものである。P191のイラストを参照

 

 

紙貼障子

紙貼障子は伝統的なの空間には欠かせない建具で平安時代後期に発生し、全面を和紙貼りにした明かり障子がその原型とされ、ガラス戸が登場するまでは採光ができる建具として、建物の外廻りに建て込まれていた。種類は多く、きめの細かい納まりも随所に見受けられる。P191のイラストを参照

 

 

面、柱にも面が取られますが、建具の面は繊細です。P193のイラストを参照 

 

格子戸

格子戸は、機能性と落ち着きのある意匠性を兼ね備えた建具であり、玄関や門などに使われることがある。P194のイラストを参照

 

 

襖は紙貼障子と並ぶ代表的存在で、襖を取り外せば一体になる開放的な可変空間が伝統住宅の特徴である。襖には絵が描かれたり、模様があしらわれ室内装飾の主役でもある。形状による襖の主な種類はP195のイラストを参照

   

 

上貼り

襖の上貼りに使われる和紙としては越前和紙の鳥の子が有名。P196のイラストを参照

 

 

 

夏障子と紙障子

障子を夏の建具だと思われている方も多いと思いますが、障子というのは実は夏以外の季節に使用されるものです。夏には夏障子と言われる通風できる障子、簾戸(すど)を使います。

 

参の九 欄間とは

P198 欄間(らんま)とは天井とふすまや障子が入っている開口部の上の通常は壁になっている部分に入る明かり取りや通風などのために使われる木製の細長い部材です。

 

種類は大きく分けて木を(主に杉)の木目を生かしながら彫刻した彫刻欄間(ちょうこくらんま)、杉の柾目の板に透かし彫り加工を施した透かし彫り欄間(すかしぼりらんま)と細い木桟を縦組に組み立て込んだ筬欄間(おさらんま)の三種類が一般的です。また竹を藤つるで編んだ竹組子欄間なども趣があり茶室などに使われたりします。

 

彫刻欄間や透かし欄間によく使われる絵柄は松。梅、花、鳥や富士山や海岸線の風景などおめでたい柄が用いられ、鳳凰などの架空の動物などももちいられます。

 

筬欄間には組子の組み方で千本格子と呼ばれる非常に細い格子や雲などをデザイン化した絵柄や形など凝った細工が用いられます。

 

竹組子欄間は素朴な材料を使い自由で動きのあるデザインになります。

 

書院に使われる欄間は一枚で使われますが、開口部の上に使われるのは二枚セットで左右で続き柄で使われ、はめ殺し(開閉できない)で取り付けられます。片側が洋室の場合などは洋室側は壁を作り、和室側から見ると壁に埋め込まれた形式のものもある。また、広縁と和室の境に使われるものとしては、引違いで開け閉めができる紙張障子と同じデザインの障子欄間や、壁そのものをくりぬいて開口部分に竹や変木、幕板などをあしらった壁抜き欄間などもあります。

 

P199欄間のイラストでどんなものなのかを確認下さい。

 

参の十 日本古来の塗装

P200 木材の塗装と言えば現代では化学樹脂系の塗料を使い様々な種類や色で目を楽しませてくれていますが、古来の日本で使われていた塗料とは土や果実などの自然素材を巧く活用していました。

 

古民家に塗られる塗料としては

 

柿渋(かきしぶ)

柿渋とは、渋柿の果実を粉砕して圧搾して得られた液体を発酵して熟成させた赤褐色で半透明の液体です。柿のタンニンを多量に含んでいて、平安時代より使われてきたきた日本固有の塗料と言えます。

 

ベンガラ

ベンガラは弁柄と書き、酸化鉄を利用した赤色の塗料です。

 

漆(うるし)

漆は、漆の木から採取した樹液を加工し、ウルシオールと呼ばれる主成分を含む天然樹脂の塗料です。塗料とし、漆工などに利用されるほか、接着剤としても利用されています。縄文時代から土器の接着や装飾で使われてきた長い歴史ある素材で、そもそもの漆の語源は「麗し(うるわし)」とも「潤し(うるおし)」ともいわれており、光沢がある味わい深い仕上がりは非常に美しい物です。

 

他に木材の表面保護と言えばエノ油、亜麻仁油(あまにゆ)、桐油などの乾性油に着色のための顔料として柿渋や松煙(しょうえん)、墨などを混ぜたものを塗るのが古来からの塗装方法です。

 

寺社仏閣などでは現在は幻の顔料と呼ばれる久米蔵(くめぞう)を使った物があります。いわゆる皆さんが古くて味わい深いと感じる茶褐色の古色の色合いです。現在は松煙と紅殻、柿渋などを混ぜて作られた久米蔵風の自然塗料で再現するのが一般的です。