巻の四 構造材 古材について…


四の一 木材の基礎知識

P209 古民家などの木造住宅を形作る骨組みには木材が使われています。これは日本は森林帯国で豊富な森林資源があるからと共に加工性に優れ耐久性の高い木材が採用されたためで、木材は他の骨組みに使われる鉄やコンクリートなどの工業製品とは違う性質を持つ自然素材で、乾燥の方法などによっても性能に差が出て来やすく、古民家を元に考えるなら国産で地元で成長した木材をゆっくりと自然乾燥させたものが耐久性は高くなります。

 

木材の基礎知識として、P209〜P216迄記しています。大まかにポイントだけを書いて、木材の性質を説明すると、

組織は、中心部の樹心=心材部と周辺部の辺材部と樹皮に分かれます。

 

建物等に使用するには乾燥させて使用します。ただちに荷重を受ける場合、平均含水率は20%以下とします。

 

日本農林規格(JAS)において公共の建築物の建築工事に使用する材料の含水率基準をP210に表を掲載しています。

また、建築仕様書にみられる木材の含水率の表もP211に掲載しています。

 

含水状態の区分は4段階で区分されており、

飽和含水状態――含水率30%以上。細胞腔には自由水、細胞膜には結合水が満たされた状態

 

繊維飽和点――含水率約30%、細胞腔には水がなく、細胞膜は飽水の状態

 

気乾状態――含水率13~17%、細胞膜に大気中で乾燥しない若干の水を残した状態

 

全(絶)乾状態――含水率0%、細胞腔・細胞膜ともに水はない

 

木材の伸縮については、樹幹(繊維)方向の伸縮が最も小さく最大0.1~0.3%、年輪の半径方向(まさ目)は樹幹方向の5~10倍、年輪の円周方向(板目)は樹幹方向の10~20倍となります。

 

木材の強度は、

許容応力度の大小関係は、曲げ>圧縮>引張>せん断

せん断強度は圧縮強度の約1/10

短期許容応力度は長期許容応力度に対する値の約2倍

許容応力度は一般に針葉樹よりも広葉樹の方が大きい

繊維方向のヤング係数は鋼材のおよそ1/20という特徴があり、

 

木材の欠点は

木材の欠点は節、丸身、繊維の傾斜(目切れなど)などで、このうち節による影響が最も大きい。

上記以外の欠点には、割れ、曲がり、ねじれ、入皮(材中に樹皮が入りこんだもの)、あて(色が濃く繊維素が少ない異常生長部分をいう)、かなすじ(材中に鉱物性結晶が沈積したもの)などがある。

 

また、木材は荷重が長期間存続すると、クリープ変形をおこす。

 

燃焼については、

木材はセルロースやリグニンなどで構成されているが200℃付近迄温度が上昇すると熱分解を開始し、260℃を超えると熱分解の速度が急速に高まる。この260℃が木材に取っては火災危険温度とされる。木材は燃焼時に炭化層を形成するが、この炭化層は断熱層となり燃焼速度を緩和する働きがある。木材自体は可燃物であるがこの炭化層の働きにより燃焼時の発熱量はプラスチックなどの工業製品に比べて小さくなる。

 

木の重さの測り方は、

体積×比重(あるいは密度)で測ります。

  

木材の比重は含水率によって変化しますが、一般的には15%の含水率時の

比重を使い計算されます。

杉は0.38、

ケヤキは0.62という数字が使われてます。 

ケヤキには0.62(0.47~0.84)という数字もあり、

産地や木目の緻密さなどによって違ってくるかと思います。 

  

たとえば長さ200cm×幅10cm×厚み10cmの欅の場合

 

200(cm)×10(cm)×10(cm)= 体積は20000cm3で、

比重が0.6とすると、20000×0.6÷1000=12kgとなります。 

参考までに他の比重を書いてみると(含水率15%のほぼ気乾状態の場合)、

松の比重 0.54~0.57

杉 0.4ぐらい

ヒノキ 0.4ぐらい

ケヤキ 0.62

桐 0.29

となります。

 

その他木材で覚えておきたい内容は、

 

芯持ち材

芯材を中心に製材した(樹心を持った)材を芯持ち材(心持ち材)、樹心を持たない材を芯去り材(心去り材)といいます。芯持ち材は、四面が板目で節も出ますが、強度があり、過重のかかる場所に使います。心去り材は、乾燥しても割れが入りにくく、柾目の面が美しいので、見栄えの大切な場所に使います。

 

柾目と板目

木取り(製材)の仕方によって、板の表面に年輪が柾目や板目になって現れます。年輪に対して直角に挽いた面を柾目といいます。木目がまっすぐな縦縞になります。板目は、年輪に接する方向に切るので、木目は山形や等高線形の不規則なものとなります。

 

木表と木裏

樹皮に近い側を木表、樹心に近い側を木裏といいます。柾目板には、木表木裏がほとんどないため割れにくく、狂いにくいといわれています。一方、板目板は木表と木裏がはっきりしており、乾燥すると木表側に反る傾向があります。天井や床に板を張る場合は、表面に木表が出るように使うのが一般的です。

 

節には生節と、死節があります。枝が生きたまま包み込まれたのが生節で、木目に溶け込んでいます。枝が枯れてから包み込まれたのは死節といいポロリと抜け落ちることがあります。その場合は木片を埋めて補修します。木材は、全く節の無い材は「無節」といい高級品として珍重されますが、節があっても強度が劣るわけではありませんし、価格も安くなります。木に枝があるのが当たり前であれば、木材に節があるのも当たり前の話です。

 

調湿機能

木材は周囲の湿度に反応して、空気中の水分を吸い込んだり吐き出したりしています。つまり、梅雨時のように湿気が多い時は、空気中の水分をとり込み、逆に空気が乾燥している冬は、木材内の水分が飛び出していきます。木材の持つ優れた調湿機能を発揮させるためには、構造材を覆い隠す大壁構造ではなく、構造材があらわしのままの真壁構造の方が良いといわれています。

 

ヤニ

樹木がヤニを出すのは自分自身の身を守るためです。ですから雨の多い土地に育つ木ほどヤニが多いといわれています。ヤニが多いことで知られる松は、材に粘りがあり、強度もあります。

四の二 建築材料として考える木材の長所と短所

木材の長所は、素材の柔らかさを活かして、調湿性、衝撃吸収力、吸音性、加工のしやすさなどですし、
その手触りの良さや表面の表情、香り等も人の心を落ちつかせます。建築に使われる他の鉄やコンクリート
との比較をP218 に一覧でまとめていますので確認下さい。

木の短所としては水に弱く腐朽しやすい、燃えやすい、大きな部材が調達しにくい、材料にバラツキがでるなどがあります。

四の三 腐朽と防腐方法

P221 木材が腐朽する原因は腐朽菌の活動によるが、適当な温度、高い湿気、空気の供給が必要です
逆に捉えればこの3つの要因のどれかを取り除く事で木材の腐朽を防ぐ事ができます。

腐朽対策としては、
P222 
土台に水に強いヒノキやヒバなどを使用する
基礎の高さを高くして湿気にくい構造にする
建物に水を進入させにくいように外壁の下地等に防水紙などを用います
小屋裏の換気を促進する為に小屋裏換気口などの対策を積極的におこなっておく必要があります。

四の四 虫害と防虫方法

腐朽と共に木材を損傷させるものとして虫害があります。シロアリはヤマトシロアリ、イエシロアリが日本では代表的な種類ですが、最近被害が増えてきているのが外材などについて日本にきたアメリカカンザイシロアリなどです。
カンザイシロアリの種類は湿気が無くても進行する事ができますので被害が拡大しやすいものです。またヤマトシロアリは一般的に地表から1m位迄の高さまでしか進行しませんでしたが、イエシロアリは小屋裏まで浸食します。イエシロアリの生息域は神奈川より以西と言われていましたが、温暖化の影響か、生息域を北上させています。

また、木材表面にピンホール状の穴をあけるのは多くはヒラタキクイムシによる食害です。ヒラタキクイムシは針葉樹を好まず広葉樹につきます。

木材の芯部分迄食害が進んでいればシロアリの可能性が、表面部分を食害している場合にはヒラタキクイムシの可能性があります。虫害は根絶が難しく駆除より予防が大切です。

虫害の被害に遭わない為には腐朽と同じく湿気が滞留しないように注意が必要です。

四の五 ヤング係数

木材の強度を測定する基準にヤング係数があります。ヤング係数とは木材の力学的な性質を表すので重要な情報になる。

 

古民家などの構造材を見た時に、梁の寸法が幅よりも高さが大きいのはヤング係数の計算で出ています。梁の幅を2倍にしても木材のたわみは1/2にしかなりませんが、高さを倍にすれば幅はそのままでも1/8までたわみを小さくできます。

 

手元に定規があればそれを持ってもらい曲げてみれば幅が広くても簡単に曲げれますが、縦にすると曲げれません。

四の六 木材の乾燥方法

古民家は自然乾燥材で建てられた住宅です。一方現在の多くの木造住宅(在来工法)は強制乾燥という方法で乾燥された木材を使います。強制乾燥にはさまざまな種類があり、蒸気を使って木材を蒸していくような蒸気乾燥や煤をつかって乾燥させる燻煙乾燥などですが、平成12年に住宅瑕疵法が施行され120度で処理する高温乾燥が実施されましたが、高温で木材を乾燥させると木材成分であるのリグニンが溶け出してしまい粘りの少ない強度の低い材料になります。現在は高温乾燥は減ってきており低温乾燥が主流になりつつありますが、古民家に学ぶなら二酸化炭素の排出もない自然乾燥をつかう家造りが増えていく事が大切だと思います。

四の八 製材について

P236 製材品の自給率割合を見ると、国産針葉樹が71%、国産広葉樹が1%で残りが外材になります。こうみると日本の木材自給率が2割程度しかないなかで製材に関しては頑張っている気がします。しかし製材所でみると全体の5%程度しか無い大型の製材所が国産材の4割を製材しており、我々が目指す循環形建築社会という考え方で考えると最も大切な地産地消というものにはほど遠い構図が見えてきます。

 

製材の種類は日本農林規格に定められており。製材に関しては「製材の日本農林規格」と「枠組壁構法構造用製材の日本農林規格」の2種類があります。

 

P237 「製材の日本農林規格」では等級を、無節、上小節、小節、並と分類し、目視等級区分構造用製材では1級、2級、3級、ヤング係数に基づく機械等級区分構造用製材では数値に基づきE50等と区分されています。

四の十 古材とは

P246 世界最古の木造建築法隆寺は約1300年経過してもまだその機能を有しています。木材は鉄やコンクリートとは比べ物にならない位長期耐用可能な資材です。

 

樹齢100年の木材は伐採100年後に強度的に円熟点達するという研究報告を書かせて頂いていますが、これは、

千葉工業大学の理事である小原二郎氏の著書「木の文化をさぐる」という本に出てきます。

 

古材は築50年以上経過した建物から算出した木材を指しますが、建築構法としては伝統構法、在来工法が対象でツーバイフォー構法は含まれません。これは国産の自然乾燥材が長持ちするという理由と、ツーバイフォー住宅に使われる木材は材が小さく、接着剤などが使われている為に再利用がしにくいのがその理由です。

 

P247に古材を再利用する際の注意点をまとめていますのでご覧下さい。

四の十二 仕口と継手

P252 木造住宅の醍醐味はその加工技術の高さです。部材同士を90度でつなぎ合わせる事を仕口、平行につなぎ合わせる事を継手といいます。

 

それぞれの場所で適材適所のつなぎかたがあると共に、加工精度が建物全体の品質にも影響を及ぼしますので適材適所に使われているかとその加工精度について理解を深める必要があります。これはもう座学ではなかなか勉強が難しい部分なので実技講習等を通じて理解を深めていきましょう。

P253からイラストで代表的な接合方法を解説しています。古民家でよく見られるのは柱では根継ぎに使われる金輪継ぎ、梁は台持ち継ぎなどでしょうか。大黒柱等は2方向のみならず4方向から差し鴨居などが来ますので雇いホゾ四方差しなど職人の知恵と工夫が施された接合方法が見られます。