壱の三 フローからストックへ考え方の変換…


フローとは一定期間に流れた量という意味で、ストックとはある一時点において貯蔵されている量という意味になります。

 

P22で書かせて頂いたフローとストックとは日本での建築の考え方の変化です。日本の住宅は、「スクラップ&ビルド型」と言われていました。平均寿命30年と経たない家を解体して新築に建替えて行く事が奨励されていた高度経済成長期。どうせすぐに壊すのだからという考え方がハウスシックなどの問題も引き起こしたのではないでしょうか。

 

一方の欧米の住宅は「ストック型」、長時間リフォームしながら住み続ける事ができる考え方が浸透しています。日本もバブルがはじけ、景気が低迷し、少子高齢化社会を迎え、徐々にストック型が重要だという意識に変化して来ました。しかし、今のストック型へのシフトのきっかけは経済面での意識改革が強いように感じます。本来のストック型の考え方は環境への配慮や、アンティーク、ビンテージ……古くなる程に味わい深くなりそれに価値観を見いだすものだと思います。


ストック型にシフトしつつある日本は欧米に比べてまだまだ小学校へ入学したての子どものようです。これからもう少し時間をかけて成熟したストック型社会に変わっていくと信じていますが、それを少し後押しする為にも古民家の良さを多くの方へ伝えていきたいですね。

建築物の耐用に関する統計 日本建築学会
建築物の耐用に関する統計 日本建築学会

(P22)壱の三 フローからストックへ日本建築学会の建築物の耐用に関する統計によると、イギリスの住宅寿命は141年。そしてフランスは85年、ドイツ79年、アメリカが103年であるのに対し、日本の住宅の寿命はわずか30年しかありません。

 


住宅ローンが終われば住宅の寿命も終わる…1世代しか住めないのがいまの日本の現状です。(P23)

 

 

平成18年住宅金融公庫資料
平成18年住宅金融公庫資料

また、日本とアメリカ、イギリスの新築と中古住宅の流通に関する住宅金融公庫の資料を見ると、日本は中古住宅の流通の割合が極端に低い事が解ります(P25)


住宅の寿命が短いから、中古住宅としての流通が少ないのでしょうか…古民家は築50年以上経過した物と定義していますが、現在日本に残っている昭和35年前に建てられた木造住宅の残存数は約280万戸、現在新築住宅は年間80万戸以上建てられていますので3年間に建てられる数と同じぐらいの古民家は残っています。


また古民家鑑定書を発行していますが、古民家鑑定書の2012年度の発行件数200件の平均の築年数を見ると築114年…

木造だから長持ちしないのか…アメリカはツーバイフォーという木造住宅ですし、イギリスも木造の古民家も沢山あります。日本の住宅の寿命が短い事、中古住宅が流通しない原因は、構造や技術面では無くて、使い捨てという戦後の高度経済成長時代に植え付けられた考え方にあると思います。