壱の十二 伝統構法と在来工法の耐震の違い


P66 在来軸組構法は耐震的な剛構造で、伝統構法は柔構造と木材の特性を利用した総持ちという二つの考え方の免震的な構造で、在来構法と伝統構法両者の地震に対する考え方は全く違います。


伝統構法の免震的構造とは、地震の揺れを各部で吸収して、地震エネルギーが建物に伝わり難くした構造です。耐震構造は、地震力に対して構造自体で激しい揺れに力で対抗しようとする構造です。伝統構法は締め固めた地面に石を置き、その上に柱を建てます。壁は柱と柱を通し貫で繋ぎ、竹小舞に土壁を塗る。地震等の外力が加わった場合、壁は土壁が壊れることで外力を吸収し、木組だけで固められた構造体はしなり、強い外力が加わって柱が石から外れ傾いたとしても構造体は壊れることはありません。


在来工法の耐震的構造とは地面と一体となった基礎に構造体が緊結されていますから、地震等の外力がそのまま構造体に伝わります。外力に対し、柱や梁といった構造体は伝統構法ほど太い材を使わずに抵抗する耐力壁と呼ばれる壁に筋交いや面材を使い、金物で補強します。柱を使って家を建てるという構法を木造軸組構法といい、筋交い、付属金物や構造用合板で壁量を確保し、この壁量の確保で、家を建てるという構法を在来構法といいます。


伝統構法は壁量に頼らず、構造架構、すなわち木組みそのもので家を建てるということで、壁に力を求めず単なる間仕切りと考え、大きな木を柱と梁として力強く組み合わせることによって耐力を生み出す考え方です。現在、我が国で建築されている木造軸組構法住宅の99%が在来構法であり、伝統構法は1%程にしかすぎないと考えられます。伝統構法は木組架構そのものでありますから、長年にわたり受け継がれて来た型があり、それに居住性・現代性を求め、型を変形させてきています。構造そのものの美しさがある建物です。

在来構法=耐震的「剛構造」伝統構法=免震的「柔構造」
と覚えましょう。