自然石の石の基礎

自然石の上に建てられた古民家には長い伝統に基づいた技が隠されています。

 

古民家の床下を覗いてみてください。今の住宅にはコンクリートで出来た基礎がありますが、古民家はこのコンクリートの立ち上がりが無くて束石(つかいし)という石の上に柱が直接立てられている構造になっています。束石は床束を支えるための石で、自然石を用いるのが一般的、綺麗に加工された四角い石もありますが、川原にあるような自然石の方が趣がありますし、自然石の表面の凸凹に木材をぴったりと合わせれる加工技術を持っていた大工さんの腕に脱帽もします。この石の基礎に柱や床束を立てる事を礎石(そせき)と言います。その昔は礎石を使わず建物の基礎は掘立式と呼ばれるやり方でした。地面に穴を掘ってその下を突き詰めて柱を立てていましたが、この方法は地面から水を吸い上げ、すぐに柱は腐ってしまいます。それを克服するために石の上に柱を立てる方法がとられるようになりました。

古民家の基礎の様子を調べてみると、建物全体に盛り土をして周囲の地面より高くして建てられています。石垣を築いて周囲より一段高くしてその上に礎石を並べて建てている古民家も多く見られます。地面から高くする事は雨水の浸入を防ぎ、木材が腐らないようにするために重要な事です。床下を密閉せずに解放した家は冬は寒いですが、夏の高温多湿時には風通しを図る事で湿気を防ぎ、涼しい家になります。南国などの高床式の住居も同じように湿気を逃がし少しでも涼しく暮らしたいとと言う事で同じような構造になっています。

礎石に使う自然石は加工して柱が乗る面を平らにしその上に柱を立てていきます。ただ平らだと柱と礎石が簡単にずれてしまうので柱とかみ合わせるための工夫がしてあります。礎石の真ん中に突起を残しておき、柱の下の面を掘ってかみ合わせるか、逆に礎石の真ん中にくぼみを残し、柱に突起を残し組み合わせるかなどです。湿気の事を考えると礎石に突起を作る方がいいと思いますが、柱の下に十字の溝を彫り水を逃がす工夫をしたものなどもあり、奈良時代の建物などは床がない構造だったので、礎石が人の目に直接触れるため特に綺麗に加工されていたようです。床が張られるようになると礎石は直接目に触れなくなり自然石がそのまま加工されずに使われるようになりました。

 

 

*自然石はデコボコしていますからそれに合わせて柱の下の面を加工して建てられていますがその方法とは、ブンマワシと言われる道具を使い石の形を柱に写し取り、加工を行います。ノミを使い大雑把に削っておき、次第に細かい所が合うようにしていく非常に手間のかかる作業ですが、どこもかしこもぴたりと合わせる必要はありません。紙一枚入らないほど隙間がなかったら逆に湿気がこもり腐りやすくなりますから、最後のところでは適当に逃げてあるのが昔の工夫でもあるようです。さすが、考えられてますよね。