八の十一 基礎部分調査項目について


P526 基礎、足下回りは交換ができない部分です。ここの状態が建物の今後の寿命を決めるとも言えます。また伝統構法と在来構法では構造が全く異なりますので十分理解して調査する必要があります。
敷地地盤の一部不同沈下がある。建物を少し離れた場所から観察し、傾いていないかを調査します。不同沈下とは建物が地盤の強度にばらつきがあることである一方に傾く事を言います。本来は垂直、水平に建てられていた柱や梁が斜めに傾くので壁などが壊れたり、変形する大きな不可が建物全体にかかるので建物に大きなダメージを与えます。


P527 擁壁などの異常がある。擁壁とは道路と敷地などに大きな高低差が有る場合に斜面の崩壊を防ぐ為に造られるもので石垣やコンクリート製、簡易な物では土嚢を使ったりします。土留とも呼ばれます。擁壁は高い地盤面から横向きの土圧が加わるためそれに耐えれる構造が要求されます。また水はけを考慮しておかないと擁壁がプールのように水を貯める構造になると土圧に水圧(静水圧)もプラスされる事になります。


P528 土壌汚染の可能性がある。土壌汚染は気が使いない内に長期間その毒性にさらされる体調を崩したりします。調査するには費用と時間もかかりますから、せめてその土地が前は何に目的で使用されていたか、あるいは地下水などで土壌汚染が広範囲に広がる可能性もありますから近隣の土地の使用状況なども調査し、土壌汚染の可能性があるのかを知るだけでも意味があると思います。


P528 地耐力は弱そうである(建替えの際は地盤改良が必要である)。地耐力とはそれぞれの土が持つ強さを数値で表した物で、強いほど家の重さに地面が耐えられ不同沈下などを防ぐ事ができます。土の粒子は大きい物から、岩、砂礫、砂、シルト、粘土と分類され一般的に粒子が大きいものほど強度も高くなります。例えば岩であれば1平方メートル当たり50t程度の物を支えれても粘土なら1t程度しか支えれなかったりします。液状化は砂やシルトなどの均一な地層で水を多く含んでいる場合に地震などの揺れにより固体化していた土が液体のようになる現象を言います。建築基準法では新築する際に地耐力に対応出来る基礎の形状を採用する事が求められておりその為に地盤調査する事が必須となっています。


P530 柱は地面に直接建てられている。柱は独立した石の上か長石の上に建てられている。柱の根元を観察し、柱や束の下に石があるか、石があっても土がかぶって石が見えなくなっているか、あるいは石が無い状態かを調査します。木材は長て方向繊維方向は毛細管現象で水を吸い上げやすく、土に直接柱が建てられている場合には腐朽しやすくなります。伝統構法の足下の自然石に柱が乗っている部分は特徴的ですが、この自然石に木材を合わせて加工する事を光付けと言います。


P530 基礎の形状が確認できない。基礎はフーチング無しで鉄筋も入っていない布基礎のようだその他2つ以上の基礎形状が混在している(石場建てと布基礎など)
基礎形状については伝統構法の場合は旧来は地面に穴を掘って柱を埋める掘立柱形状でしたが、柱の腐食を防止するため、礎石に柱を載せるようになりました。礎石の下には、根固め石(割栗石)を敷き詰め、胴突などでつき固める地業がされています。礎石の上に宗教的あるいは芸術的な台を設け、その上に柱を載せているものを礎盤あるいは沓石と呼びます。石の上に柱を建てる方法を石場建てといいます。在来構法の場合はコンクリート製の布基礎の上に土台を敷いてその上に柱を建てます。基礎は鉄筋の入っていないもの(無筋)入ったもの有筋、そして逆L字型にフーチングがついたものなどがあり、最近の住宅ではベタ基礎が一般的になっています。


P531 白蟻による食害が見受けられ、表面を木槌で叩くと空洞音がする。シロアリは従来の説明ではヤマトシロアリとイエシロアリの二種類を説明していたが、最近はこれら二種類意外にもアメリカカンザイシロアリやカンモンシロアリ、ダイコクシロアリなどによる被害も増えてきています。


P533 木部表面に小さなピンホール状の穴が無数に開いている。コンパネなどの合板やフローリングや家具、ケヤキなどの広葉樹の大黒柱などのデンプン質の多い辺材部分の木材表面を残して食害するのがヒラタキクイムシです。木粉状の糞が排出されたり木材内部で成虫になったヒラタキクイムシが脱出する際に開けた脱出孔などが特徴です。木材の芯の部分迄食べられていてボロボロの状態であればシロアリの可能性が高いですし、木材の回りの部分を表面の一皮を残して真ん中があまり食べられていないようであればこのヒラタキクイムシの可能性が高いと思われます。


P534 柱と柱の間に足固めがありが足固めに腐朽がある。足固めとは、伝統構法の古民家において柱の根元にある柱と直角に交わる横架材です。伝統構法は基礎が無く、束石の上に柱が建てられていますが、柱の上部は桁や梁などの頭つなぎで連結されていますが、足下をつなぐ為の物です。足固めと頭つなぎの間には貫が通されます。


P536 鉄筋が一部露出している爆裂現象がある。爆裂とはコンクリート内部の鉄筋が経年劣化によって錆びてしまい、膨張しコンクリートが押し出されひび割れ、ついには剥落してしまう現象です。そのまま放置するとどんどんと広がって行くので早めの補修が必要です。


P536 エフロレッセンスが発生している。エフロレッセンスは白華(はっか)現象ともいい、コンクリート内部に侵入した水分が、蒸発する際に石灰分などの可溶成分とともに表面に染み出し固まるか、もしくは空気中の二酸化炭素と反応して固まることを原因とするコンクリートやモルタルの表面部分に浮き出る白い生成物のことで、これが浮き上がる現象を白華現象という。白華が生じても、コンクリートの強度には問題はなく、生成物も無害であるが、外見上の問題となることがあります。