巻の六 在来工法…


六の一 在来工法とは

住宅の主な構法は木造住宅では在来構法、2×4工法(ツーバイフォー)、その他非木造工法ではプレハブ工法、鉄骨造や鉄筋コンクリート造があります。「在来構法」は「木造軸組構法」ともいい、土台・柱・梁・筋交いなどで荷重を支える構法です。

 

P346 在来構法の骨組みはコンクリート製の基礎の上に土台(どだい)と呼ばれる横木を敷き基礎に埋め込んだアンカーボルトでしっかりと固定して、その上に柱を建てます。柱は土台に「ほぞ」と呼ばれる凸部を作り差し込みます。そして接合部をV字型やL字型、あるいは凸の形の山型のプレート金物などで補強します。家のコーナーに来る柱などは1階から2階迄1本の長い通し柱(とおしばしら)と呼ばれるものを使用しますが、通し柱などはコンクリートの基礎から埋め込んだホールダウン金物と呼ばれる金物を使用して地震の際に柱が抜けるのを防ぎます。土台と梁の間には柱と柱の間に斜めの部材筋違いを入れて地震の際に建物が斜めに傾くのを防ぐ為に入れます。筋違いは使用する部材の大きさや、片側斜めに入れるか、バツ印のようにタスキ掛けで入れるかにより強度が変わります。壁料計算と呼ばれる構造の計算をして、バランス良く配置する事が大切です。筋違いもボックスプレートと呼ばれる金物を使い土台と柱に均等に力がかかるように補強します。

 

P348 伝統構法との違いは、

 

伝統構法では軸組みに大径材を使用し、継ぎ手・仕口によって接合するが、在来構法では小径材を用い接合部を金物で補強する。

 

伝統構法では軸組みを固めるために貫の役割が大きいが、在来構法では筋交いの役割が大きい。また、在来構法では水平面の剛性確保のため火打ち材を用いる。

 

伝統構法では土壁を用いることが多いが、在来構法ではボード張りに仕上げを施す場合が多い。

 

P349 壁は仕上げによって柱が見える真壁(しんかべ)と柱の見えない大壁(おおかべ)があり、真壁造のほうが大壁造にくらべると構造部分の状態が把握しやすくまた再利用がしやすい。

 

真壁造

・部材がそのまま外に現れているため、部材の状態を把握しやすい。

・部材の表面が外気にさらされており、乾燥している。

・壁内部に結露を発生させるおそれが少ない。

 

大壁造

・構造体が壁で覆われており、壁内部に湿気を溜めやすい。

・構造体の損傷を解体前に発見することが難しい。

・解体時に部材を損傷させるおそれがある。

 


六の二 その他の建築工法

P350 構造の選択は、その建物が建つ土地の条件や内部空間の取り方など、使用目的に従って材料や組み立て方が選ばれますが柱と梁で空間を確保する構法なら、在来構法、鉄骨造、鉄筋コンクリートラーメン構造などがあり、壁で骨組みを確保するのはツーバイフォー構法やプレハブ構法などに分類できます。木造住宅の代表的な伝統構法、在来構法、ツーバイフォー構法を説明すると、伝統構法と在来構法は木造軸組構法といい、柱と梁などの軸組で荷重を支える構法で、ツーバイフォー構法は枠組み壁構法といい一体化された床や壁や天井全体で荷重を支える構造です。

 

P353 構造による比較の表を掲載しているので確認下さい。

 

 


六の三 在来工法の各部位

P354 布基礎

通常、住宅などに用いられる基礎で、コンクリート(鉄筋の入る場合もある)製の連続一体化した形状の基礎をいいます。

 

P355 ベタ基礎

地盤が軟弱の場合に用いられることがあります。布基礎のフーチング部分が建物全体に設けられ、スラブ(版)を構成していると考えてよいでしょう。

 

P355 独立基礎

独立して設けられた柱に用いられる基礎ですが、構造的には他の構造体と一体化していないため、不同沈下などの不安が残ります。

 

P358 大引き

大引きは根太を受ける90~120mm角程度の角材で、910mmごとに設置された床束の上に載せ、端部は土台や柱、大引受けで受けます。

 

P358 根太

床板を直接支えるために303mm(畳の場合は455mm)間隔で、大引きまたは梁の直交方向に掛け渡された角材が根太です。根太の太さは、スパンが910mmで45×45mm1,820mmで45×105mmの断面のものを使うことが多い。

 

P359 軸組の種類

大壁式

柱の両面に仕上げを施し、柱を包み込むような構成。筋交い(断面の大きい部材)の取付け、金物の補強などが可能で、真壁と比べると耐震的な軸組みといえます。

 

 

真壁式

柱にぬき(貫)を通し、それらを互いに結んで構成される軸組みをいい、仕上げは柱の内側に収めます。真壁はわが国の伝統的な工法で、通常、和室の壁として用いられます。耐震的には多少不利な点があります。

 

 

併用壁

片面大壁、片面真壁の構造からなる軸組みです。洋室と接する和室の外周壁などが、これに該当します。最近では真壁式軸組みが少なくなり、併用壁と大壁で構成される例が多くなっています。

 

P360 真壁下地

真壁の下地には、柱より面落ちさせた位置に胴縁を縦横同面に組む方法や間柱に横胴縁を取り付ける方法、間柱に木摺りを取り付ける方法、通し貫を設けて土壁の小舞下地にする法などが挙げられる。どの方法を採るかは、基本的には仕上げの種類や厚さによって選ぶことになるが、両面真壁にするか、片面大壁にするか、仕上げ面と柱の散りの寸法をどのくらいにするかなどの仕上げ厚さ以外の寸法も押さえておく必要がある。真壁に筋交いを入れて耐力壁にする必要がある場合は、筋交いの位置や厚さなども設計段階で十分検討し、仕上げの妨げとならないよう注意する。また、左官仕上げにする場合は塗り厚に応じて、羽目板張りの場合は板厚に応じて、散り决りを柱材の加工段階で刻んでおくと相互の狂いや暴れによる散り透きなどが起こりにくく、きれいに納めることができる。

 

P362 小屋組み

和小屋

柱および軒げたに架け渡した水平部材(小屋ばり)と、その水平部材の上に設けられた垂直部材(小屋づか)から構成される小屋組みです。住宅など、張り間寸法が小さく、間仕切壁の多い構造体に用いられます。

 

和小屋の軒先の組み方には、

 

折置組(おりおきぐみ)

小屋梁の端部と柱の納め方の一つ。柱の頂部に直接小屋梁を架け、その上に軒桁を架ける方法。柱の重ねホゾで柱と桁を貫き3材を固定する。古くから使われてきたが今日では用いられることは少ない。軒桁の荷重を負わず柱の頂上を連結するだけの目的であり、細くても丸太でもよい。その柱の下には必ず柱か束がくる。

 

 

京呂組(きょうろぐみ)

小屋梁の端部と柱の納め方。柱の上に桁を載せ、この桁の上に渡りあごまたは蟻掛け小屋梁を架け渡す方法。最近はこの組み方で建てられることが多い。太い角材の軒桁を使う場合には必ずしも梁の下に柱が無くても骨組みができる。間取りに自由度が増し、小梁間の住宅に最適。小屋梁の小口が外から見えにくい。

 

の二つがある。

 

 

洋小屋

明治時代以降、わが国に入ってきた小屋組みで、事務所、学校などのように大きな張り間を架構する際に用いられています。水平部材(陸ばり)、垂直部材(真づか、つりづか)、斜材(合掌、方づえ)の相互が三角形の構成(トラス)を成すように架構された小屋組みです。


六の四 在来構法などに使われる仕上げ材

外壁に使われる仕上げ材について

 

P366 サイディング

在来構法の住宅の外壁は伝統構法の住宅と同じように木や漆喰なども使用されますが、モルタル壁の上に塗装したり、サイディングと呼ばれる工場で生産された板を貼って仕上げられたものが多いです。サイディングとは外装材の一種で板状に成形されてもので金属製と窯業系(ようぎょうけい)と呼ばれるセメントをベースにしたもの大と木質系の3種類に大別されます。

 

P367 ALC

ALCとはAutoclaved Lightweight Concreteの略称で、工場で発泡・固化後に高温高圧中で蒸し焼きした気泡のあるコンクリートの外装材です。

 

P367 モルタル

セメントを砂と砂利を1:3:6の割合で混ぜて出来るのがコンクリート、セメントと砂を1:3の割合で混ぜたものがモルタルと呼ばれます。またセメントを水だけで練ったものをノロといいます。セメントは砂利が入っている為に強度がありますが、表面の仕上げを平滑にしにくいため、基礎などもコンクリートの表面にモルタルを塗って仕上げます。外壁の仕上げの場合は柱などの外側に防水の為のシートを貼り、バラ板と呼ばれる木材を打ち付けモルタルの付着を良くする為の金網や鉄筋などを取り付けて仕上げます。一度に厚みを厚く仕上げると割れやすいので2回以上に別けて塗ります。モルタルが良く乾いたら塗装や左官の塗り壁材などで仕上げます。最近は重量を軽くする為に外壁などはパーライトなどと呼ばれる軽量の骨材などを混ぜて塗る事が多くなっています。

 

P368 塗装材

外壁の仕上げに使用する塗料は多種あり主なものを上げると、フッ素系、シリコン系、ウレタン系、アクリル系などで溶剤としてシンナーなどを使用する油性と水性があります。また鉄部などに塗るものは始めに錆び止めを塗り、2回目に仕上げの塗料を塗るなど下地と仕上げで材料を変えたり、主剤と硬化材が別れている2液性のものを現地で混ぜて塗布するなど様々なものがあります。

 

古い住宅の外壁で最も多く使われている塗料としては、リシンとボンタイルなどと呼ばれるものがあります。リシンとは、塗料を混ぜた骨材をスプレーガンを使用して薄く吹付ける工法で表面が粗く均一になり不陸などが目立たなくなります。モルタルやALCで下地を作った場合によく使われ、比較的安価で仕上がります。セメントリシン(セメントと砂粒を混ぜたもの)やアクリルリシン(アクリル樹脂に砂粒を混ぜたもの)などの種類があります。ボンタイルとは俗称で、吹き付けタイルと呼ばれる塗装方法です。吹き付けやローラーで仕上げる方法で1960年代頃から使用されています

 

P369 タイル

タイルは壁や床の保護や装飾的に使用する板状のもので正方形や長方形など様々な形と寸法がある。材質は陶磁器やコンクリート、プレスチックにガラスなど多種有り外装に使用されるのは主に陶磁器性のものなどである。

 

P369 煉瓦

煉瓦は粘土などを型に入れ窯で焼き固めたものや、圧縮して作られる建築材料で通常は赤茶色の直方体である。煉瓦を積み上げて壁とする煉瓦建築は古くメソポタミア文明当時からあるが、日本は地震が多いためあまり発達してこなかった。

 

 

屋根に使われる仕上げ材について

P370 粘土瓦

粘土を使った焼きものの屋根材で、表面に釉薬が塗られている釉薬瓦と、塗られていない無釉瓦(素地瓦、いぶし瓦、素焼き瓦)とに大別することができます。他の屋根材に比べて重量が重くなり、耐震性能を考慮する必要があります。色味に関しては半永久的にメンテナンスがいらず、年月とともに味わい深さが出てきます。

 

P370 セメント系

 

厚形スレート(JIS A 5402)プレスセメント瓦施釉

セメントと砂を原料とするセメントモルタルを型枠に入れ、プレス、脱水、成形し、養生後に塗料で表面処理したものです。

 

コンクリート瓦(該当するJISは無し)

厚形スレートと同じ材料で構成されますが、厚形スレートよりセメント量が少ない硬練りのモルタルで製造します。モニエル瓦と呼ばれています。

 

 

P371 スレート系

 

化粧スレート(JIS A 5423)

カラーベスト・コロニアルと呼ばれセメントを高温高圧下で養生し、成型した板状の合成スレートに、着色したものを化粧スレートといいます。

 

天然スレート

玄昌石(げんしょうせき)を屋根に使っている場合、天然スレート葺きと言います。

 

 

P371 軒天、破風

屋根の軒の裏側を軒天や軒裏といい、切り妻屋根の妻側を破風といい屋根の軒の先に付けられる隠し板を鼻隠しといいます。雨樋は鼻隠しの板に取り付けられます。軒天は木材や合板や、消石灰に珪素土、石綿などを水で練って成形したケイ酸カルシウム板(ケイカル板)やモルタルなどで仕上げられ、破風や鼻隠しは木材やケイ酸カルシウム板などで仕上げられます。いずれも表面保護の為に塗装などが行なわれます。

 

P372 雨樋

雨樋は銅やステンレスなどの金属製のものもありますが高価な為多くは塩化ビニール製のものが多く普及しています。形状は横樋、縦樋共円形のものと角の種類があり、外壁や屋根の色に合わせて白色、茶色、黒色などのバリエーションがあります。塩ビ製の樋は約10年程度で劣化により割れたり、ジョイント部分が外れたり、ゴミなどが詰まったりして機能が低下します。また、雪の重みでる樋が曲がったり、水の流れをとる勾配がおかしくなったりもしますので、定期的なメンテナンスが必要です。

 

P372 小屋裏換気口

基礎回りには床下の換気の為に基礎換気口が付けられているが、同じように屋根裏(小屋裏)の通風の為に小屋裏換気口も必要です。

 

P373 金属について

 

カラー鋼板は鋼板(板状に加工された鋼の事)に塗装を施したもので住宅ではメーカーで塗装をされたプレコート鋼板と呼ばれるものを一般的には使用します。これにも実は種類があって原板をメッキしたものとしていないものがあります。

メッキの種類は一般的に塗装溶融亜鉛めっき鋼板が一般的ですが最近は亜鉛にアルミニウム合金をプラスしたメッキ増えています。表面の塗装はポリエステル樹脂系が多く、中には耐久性をます為にフッ素樹脂を使った商品や、塩化ビニール樹脂をラミネートした商品などもあります。

 

よくカラー鋼板の事をトタンと混同される方もいますが、トタンとは亜鉛メッキされた鋼板の事でJISでは大波と小波の二つの波形の形状が示されています。またブリキとは、亜鉛ではなくスズでメッキした鋼板の事になります。

 

ガルバ鋼板はガルバリウム鋼板のことで、アルミニウムと亜鉛メッキ鋼板です。ガルバ鋼板は亜鉛とアルミと微量の硅素をメッキする事でアルミの作用で表面に強固な皮膜を形成してメッキ層自体を保護する事で腐食性能を高めています。

 

ステンレスは鉄に錆びにくくする為にクロムやニッケルを含んだ合金です。住宅などの図面ではSUSと記入する事からサスと言ったりします。ステンレスはクロムが空気中の酸素と結合して表面に皮膜をつくることで錆びません。ステンレスの流しの上に包丁などをおいておくと錆が表面に発生するのは電蝕という現象を起こす為で、例えばステンレスの容器などに鉄管で配管すると簡単に鉄管が錆びて朽ちるので、電気温水器などの配管などは鉄ではなくて銅管を用いたりするのはこの為である。

 

P375 内部仕上げ(壁、天井)

 

プリント合板

プリント合板は合板の表面に木目などを印刷したもので、最近はラミネート方式と呼ばれる表面を保護する樹脂塗装がされた印刷紙を熱を加えながら圧縮して接着したものなどがあり経年変化による表面の割れを防止する商品が出ています。

 

ビニールクロス

ビニールクロスはポリ塩化ビニール樹脂をシート状にして裏側を紙で裏打ちし表面に型押し加工や印刷を施した壁紙である。様々なテクスチャーや色、柄があり、また比較的安価であり、最近は抗菌や汚れ防止などの機能を持たせた商品も多くある。

 

その他漆喰や珪藻土などのさまざまな左官材料を塗ったり、木材などが使用される

 

 

P376 内部仕上げ(床)

 

タタミ

タタミは昔は、ワラ床にイグサを編んだものを貼って作るものであったが、現在はワラの変わりにインシュレーションボードや木質系材料や断熱材としても使われるポリスチレン樹脂のスタイロフォームなどを使用したものが一般的となっており化学タタミなどと呼ばれる。

 

フローリング

フローリングとはフロアリング(flooring)という床を覆う為の意味であり、単層フローリング(いわゆる無垢)と下地の合板に化粧材を張り合わせた複合フローリングに分類される。決まった長さで納入される定尺フローリングと、一片の長さが様々な乱尺フローリングがあり、ネタの上に直接貼る根太張り工法と、コンクリートやネタの上に合板を張りその上に張り付ける直張りの2種類の施工法がある。

 

ビニール系床材

ビニール系の床材としてはトイレや洗面所などの床によく使われるものにビニール製のクッション性があるシート状のクッションフロアーがあります。Pタイルとはプラスチックタイルの事で塩化ビニール樹脂などの硬質な素材を使った床材。30cm角などのサイズがあり耐久性や耐摩耗性に優れており住宅の他学校などにも良く使用されている最近は固さを和らげる為にアスファルト系やゴム系などの種類もあります。

 

絨毯(じゅうたん)

絨毯はカーペットとも呼ばれ、3000年の歴史があるとされ、製法によりタフテッド、ウィルトン、ダブルフェース、ジャガードや緞通など様々有りペルシャ絨毯なども有名である。部屋全面に敷きこんだり、一部分に敷く場合もある。交換が簡単に行なえるようにタイル状になったカーペットを敷き込むタイルカーペットなどもあり、部分的に敷く場合は部屋の真ん中に置く中敷き(センター敷き)やピース敷き、重ね敷きなどがあり、ピース敷きのものはラグとも呼ばれます。

 

六の五 新築住宅建築のプロセス


P380 マイホームの得かたは大きく分類し3つあり、新築住宅の場合でもハウスメーカーや設計士や工務店などに依頼して自由な間取りや予算で建てる注文住宅、新築で完成してある建物を購入する建売住宅、その土地に合わせてプランが決まっており、契約したら建築がはじまる売建住宅や、中古住宅を購入してリフォームしたりと細分化されており、住む人の考え方、価値観に合わせて多種多様。どれが正解というわけではありませんが、希望や、コスト面、将来設計、などを十分検討して選んで行く必要があります。

P381 土地の購入について
土地の値段は一体どうして決まっているのか、その地域の相場や景気により様々に変動し、定価というものがありませんので逆に「土地いくらで売りたい」という人と「その土地をいくらで買いたい」という人の思惑が一致したときに初めて値段が決定します。ですから尚更価格がお得なのかどうなのかが解りにくく選びにくいのだと思います。土地の金額を税制面で考えると、土地を所有している人には毎年固定資産税という税金がかかります(住宅を取得していれば住宅にも固定資産税が合わせてかかりますし、土地を新たに取得すれば不動産取得税もかかります)がその基準にもなってくるのに国土交通省の地価公示というものがあります。これは全国28000ヵ所を標準地に設定し、毎年1月1日時点の正常な値段を3月下旬頃に発表する制度です。限られた箇所ですのであくまでも参考程度ですが、標準地の周辺地域に関しては相場を知ることができます。

土地を購入する場合、多くの人は不動産業者に仲介に入ってもらいますが、不動産屋さんに支払う費用として仲介手数料が定められています。

P383 土地や建物の権利について
土地や建物に関しての権利とは民法で10種類の権利が定められており、所有権、占有権、地上権、入会権、永小作権、地役権、留置権、先取権、質権、抵当権があります。これらは物権と呼ばれ抵当権や留置権、先取権や質権は担保を目的とした担保物権と言われています。抵当権とは銀行から融資を受けると地建物の所有者(抵当権設定者)とお金を貸す側である債権者(抵当権取得者)との間の関係で登記を行う際に同時に設定されます。

P384 資金計画に付いて
住宅の取得に際しては土地代金や住宅の建築費以外にも様々なお金が必要ですので資金計画を立てる際には十分に考慮する必要があります。資金計画は、住宅にかけることのできる予算の総額、住宅にかかる資金の総額のこの2つの視点から全体の計画を把握することです。

かけることのできる予算の総額 ≧ かかる資金の総額

予算の総額は、自己資金+住宅ローンで表され、預貯金や親からの援助、有価証券等も自己資金に含めます。

資金の総額は、
土地購入代金+建物本体工事費+建物別途工事費+諸経費
となります。

P387 銀行ローンの借り入れ限度額の目安を計算するには、まず年収×返済比率で計算します。返済率とは、収入のうち返済にあてられる割合で通常30〜40%程度で設定し、現在他の借入金がある場合はその全ての返済金額を控除します。借り入れの情報は銀行間で共有されており、他に車のローンや、クレジットカード、キャッシングサービスやボーナス支払いなど借入金などがある場合は借り入れ限度額は低くなります。もちろんいずれかの返済が遅れていたり、引き落とし日に引き落としが出来ていないなどの事が度々あれば融資そのものを断られる場合も考えられます。

年収×返済比率(30〜40%)=年間返済可能額

また、借りた住宅ローンの返済方法には月々の返済額が一定の元利金等方式と元金を月々均等に返済する元金均等方式の2つがあります。

六の六 木造住宅の設計について


住宅を設計する際には、構造や仕上げ材などの知識に加え、光や風、高齢者への配慮としてバリアフリーやユニバーサルデザインなど多くの知識が必要です。全てをここに書ききれませんが、自分がそこに住む人の立場になって考える必要があります。

P391 住様式と特徴 
住宅は立地、用途によって立地別:都市住宅、農山村住宅、漁村住宅、その他(別荘・炭鉱住宅・鉄道官舎など)と、
用途別:専用住宅、併用住宅(店舗・作業場・診療所など)に分類され、
住様式として伝統型(和風)、近代化型(洋風)と圧縮形(ワンルームマンションなど)に分類される。

P392 住宅の平面計画のポイントは、

日照、通風を考慮する

動線は複雑に交わったりしないように、単純明快に処理できるようにする

居間・食堂は、団らんがなごやかに行われる雰囲気をもたせる

個人の空間は、プライバシーを重視するなど

P393 採光、換気

居室の採光に有効な開口部≧1/7×(居室床面積)
居室の換気に必要な開口部≧1/20×(居室床面積)

P396 動線
家の使い勝手を決めるものに動線というものがあります。動線とは建物の内部を人が自然に動く際に通る経路の事で、人がどのように家事などを行う際にどういう風に動くかを検討する事を動線計画といいます。動線はなるべく短い方がよく、また家事をする人やその他の家族と動線がなるべく交差しないほうがいい動線となります。また、私が設計した住宅では直線的な動線では無く、家の中を1周回る事が出来る回遊動線のプランしましたが、なかなか使い勝手が良かったそうです。

P397 バリアフリーに関しては通称バリアフリー新法と呼ばれる「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(平成18年6月21日)で公共機関などでは車いすと人がすれ違う廊下の幅や、通路の幅や目の不自由な人が利用しやすい工夫がされたエスカレーターやエレベーターなどの厳しく規定が決められています。住宅でのバリアフリーでの考え方は床に出来るだけ段差を設けないようにしたり、場合によってはスロープを設けたり、あとはユニバーサルデザインの考え方にも含まれる手摺の取り付けや廊下の幅などが決められています。

・通路の幅は介護用車いすが使える78cm以上の幅を確保する。
・部屋の出入り口は介護用車いすなどが通れるように75cm以上を確保しすま。

P398 ユニバーサルデザインは、国籍や老若男女や障害、能力の区別無く利用出来る商品やサービス、設計の事を指します。公共施設などで見かけるピクトグラムと呼ばれるトイレの男性女性のマークやエレベーターや階段の位置の表示なども誰が見ても理解出来るユニバーサルデザインの考え方です。

ユニバーサルデザインは
・どんな人でも公平に使えること
・使う上で自由度が高いこと
・使い方が簡単で、すぐに分かること
・必要な情報がすぐに分かること
・うっかりミスが危険につながらないこと
・身体への負担がかかりづらいこと(弱い力でも使えること)
・接近や利用するための十分な大きさと空間を確保することと7つの原則が示されています。(wikipediaより)

P399 ユビキタスという考え方は、それが何であるかを意識させず「いつでも、どこでも、だれでも」が恩恵を受けることができるインタフェースや環境、技術のことです。

六の七 在来構法住宅のメンテナンス


P400 住宅は経年に伴い機能や美観などが当然落ちてきます。どんなにいい材料を使ってもそのスピードを送らせる効果はあるものの劣化する事に違いはありません。そこで機能や美観などを維持する為に定期的なメンテナンスが重要であり、車に義務付けられているような車検の制度と似たようなものが住宅にもあるといいですが、現状は無いので所有者が自ら能動的にメンテナンスの意識を持ち行動して行く事が住宅の長寿命化に繋がります。

P403 住宅のメンテナンス
建物とは通常建てた直後が一番美しくまた性能も高く、一般の商品などと同じで経年変化により劣化するとともに性能も落ちていきます。しかしあまりにも高額な商品の為にメンテナンスなどを行わなくても性能が維持されるような錯覚を与えたり、また性能が落ちにくいような謳い文句の商品を誤解してあたかもメンテナンスフリーであるかのように思っているユーザーが多いですが、建物というのはどんなにお金をかけても建てられた時から老朽化の道をたどっていきます。メンテナンスとは徐々に落ちていく性能の低下のスピードを鈍らせるという意味であり、メンテナンス次第で同じ条件の土地に同じように家を建ててもその耐久性が著しく変わってくるのです。

P404に一般的な住宅のメンテナンススケジュールを掲載していますのでご確認下さい。

P405 住宅履歴情報について

住宅の長寿命化には、適切な点検、補修等の維持管理やリフォーム工事を継続的に行うことが必要であり、そのためには住宅に関する履歴情報が蓄積され、また活用されることが不可欠です。必要な情報を適切に保存し、後世代の人たちも含めて適切に活用できるようにしておくことが、住宅の長寿命化を実現するための必須条件であるといえます。このため、国土交通省では、円滑な住宅流通や計画的な維持管理、災害や事故の際の迅速な対応等を可能とするため、
住宅の新築、改修、修繕、点検時等において、設計図書や施工内容等の情報が確実に蓄積され、いつでも活用できる仕組みの整備とその普及を推進しています。 

住宅履歴情報は「家歴書」とも呼ばれ、古民家鑑定書は古民家の「家歴書」の役割を果たします。

六の九 在来構法住宅の耐震診断について


P419 国土交通省では、耐震診断や耐震対策を行う事を推奨はしていますが、義務付けている事は全く無く、国土交通省が外部業者に委託、依頼を行い耐震診断を行う事も一切おこなわれておりません。ただし、耐震診断や耐震工事の支援は行っているので、適正な業者に耐震診断をおこない、国土交通省が定める支援制度を把握し、適正な耐震診断を実施する事で住宅、建築物耐震改修事業として、耐震診断を民間が実施する場合は補助を出しています。補助率は工事費用の2/3で、このうち国が1/3を、地方公共団体が1/3を負担しています。

耐震の診断方法は、簡易版の診断方法である「誰でもできるわが家の耐震診断」と専門家がおこなう簡易耐震診断である「一般診断」「精密診断」の3つの方法があります。

簡易耐震診断では、地盤・基礎、建物の形、壁の配置、筋交い、壁の割合、老朽度の6項目をそれぞれ評価し、その点数を掛け算して判定する。総合評点が1.5以上であれば「安全」、1.0以上1.5未満であれば「一応安全」、0.7以上1.0未満であれば「やや危険」、0.7未満であれば「倒壊や大破壊の危険がある」と判定されます。

特に1.0未満の場合には、専門家の精密診断を受け、耐震補強について検討する必要があります。

六の十 壁量計算


在来構法は壁量計算という計算方法で構造の確認が行なわれます。これは在来構法には有効な計算方法ですが、伝統構法の古民家は壁が少ない構造なのでこの計算方法では耐震性を図る事は出来ませんので注意が必要です。在来構法の建物の場合は前の章で記載した耐震診断法で安全性を確かめ、詳細な調査が必要な場合は現況の建物の図面を作成し、筋違いの位置などを調べて壁量計算を用いて耐震の安全性について判定を行ないます。


P422 在来構法の構造計算は壁料計算という方法で計算されます。これは建物に対して横からかかる力、地震の際に発生する水平力(地震力)、台風時に発生する水平力(風圧力)に耐えれるように建物の床面積(地震力)及び外壁の見付面積の大きさ(風圧力)に耐えれるように耐力壁を配置します。地震力、風圧力のそれぞれを計算して必要な壁量の多い方、安全側の数値を採用します。

地震力に必要な壁量は
各階の床面積×壁係数で計算します。

壁係数は、建物の階数、重さによって決めれており、各階の床面積に壁係数を乗じた長さ分、建物のX方向、Y方向それぞれの方向に壁が必要になります。

壁係数はP423に掲載しています。

風圧力に関しては各階外壁見付け面積×壁係数(風圧)によって計算します。

P424 地震力、風圧力のそれぞれで計算したX方向、Y方向の必要な壁の長さに現状の壁の長さが足りない場合に筋違いなどで壁を補強する事で壁長さを補います。壁に使用する部材や筋違いによりこの壁の倍率、壁倍率が決められており壁倍率を利用して必要壁量を確保します。 壁の倍率についてはP424に掲載しています。

壁実長 × 壁倍率 > 必要壁量 = OK

六の十一 今も残る家づくりの儀式


P425 現代でも工事に際しいろいろな儀式が行われますが儀式は本来、神様に感謝を表し工事の進み具合などを報告するための祈願するものですが、最近では「儀式」というよりも「お祝い」として扱われ、省かれたり、略式されたりし、本来の感謝を表すという気持ちは薄れてきている気がします。儀式は必ずやらなければならないコトではありませんが、感謝の気持ちは忘れないようにしたいですね。