壱の二 古民家と現在住宅の違い…


古民家は伝統構法で建てられた建物で、現在の住宅は在来工法で建てられています。建て方の違いは機能や使い勝手などにも影響を及ぼします。(P18)に古民家と現在の住宅の考え方の違いを表にしていますが、快適に過ごす為の季節は、古民家は夏を快適に、現在の住宅は気密性を高め、冬を快適に(気密性が高いという事は夏場もエアコンなどを使えば夏も快適に過ごせます)オールラウンダーですね。


家の主役は、現在の住宅は当然そこに住む家族が主役ですが、古民家は実はお客様を主役として考えられていました。お客様をお招きする応接室である客間を南側の庭が眺められ、日当りのいい場所に作り、台所やリビングなどよりも優先されていました。これは封建時代ならではの考え方でしょうから現在とは大きく違う考え方です。


古民家は家長制度の元、家族が一致団結して生活していましたので個人の自由より家族が優先されました。結婚などもいまは自由に好きな人と結婚するのが当たり前ですが、昔は結婚は家と家を結びつけるものでした。


封建的な制度を今も守る必要はありませんが、古民家の生活の中でも残しておきたいのは家族のつながり、家族団らんは大切だと思います。核家族化が進む現代では2世代、3世代に渡ってのコミニュケーションは希薄になりつつありますが、子どもの成長や教育の観点からも親だけでなく、おじいちゃん、おばあちゃんから学ぶ事は多くありますし、昔は地域全体が子どもの躾や教育をしていました。モンスターペアレンツなどという言葉も無かったでしょう。


少子高齢化が進む日本… 教育という視点でも古民家の家族団らんや、地域のコミュニティーのあり方に学ぶポイントはあると思います。

 

(P20)田の字の間取りが日本の住宅の原点……

 

古民家の間取りはいわゆる田の字型、これは何となく田の字になったのではなくて、機能ごとに分化されたいわば昔の間取りの完成形でもあるのです。


田の字の間取りを紐解くと、東南から「にわ」、南西「おもて」、西北「なんど」、東北「だいどこ」となります。これは後世建物の規模が大きくなりさまざまな部屋が足されて大きくなっていきますが、この基本構成はあまり変化しませんでした。


「にわ」は、庭では無く、土間の意味です。外部と内部を結ぶ玄関でもあり、また夜間や冬場に作業を行う作業場でもありました。


「おもて」は客間の事でもっとも大切にされた部分で、普通の生活の中ではあまり使用されず、お客様が来た時に使用する特別な空間でした。


「なんど」は現在の納戸と同じように家財の収納スペースであり、また寝室にもなりました。大きな庄屋の住居などではなんどにもいくつかの部屋が設けられ、家長の為の奥座敷や、お産をする為のお産部屋、昔は跡取りは家を継いで行く為に非常に大切な考え方でした、などが設けられました。


「だいどこ」はそのまま台所、キッチンであり、多くは土間から続く床の無い空間にカマドが設けられていました。まただいどこには勝手口が設けられ、主婦や子どもは勝手口から出入りをする事が多く、玄関がある住まいでも玄関を使えるのは家の主人とお客様だけだったようです。


古民家を見に行った際にはこの田の字の間取りを思い出して見ると間取りの理解がしやすいです。*武家屋敷は中庭のある寝殿造りから発展しているので、田の字の間取りの法則には合いませんので注意してください。