壱の十一 古民家を残す意義とは


P60 地球温暖化が世界規模の深刻問題となっている現在、家造りの観点でも二酸化炭素の削減を促すべく、日本の住宅政策は大量生産大量廃棄から「いいものをつくってきちんと手入れして長く大切に使う」という循環型の考え方へ移行しています。


P61 「樹」(木)は光合成により、二酸化炭素を吸収し、酸素を排出します。「樹」は建築資材として伐採され、「木」となります。その段階で光合成は行われなくなり、「木」には炭素が蓄積されています。木を形作っている成分とは炭素と水素が大量に組み合わさった、セルロースという物質です。


愛媛大学農学部森林資源利用システムの杉森准教授と行っている共同研究による試算では、例えば築60年の古民家から出た古材の松の梁材の場合、平均含水率は15.7%(気乾状態、細胞膜に大気中では乾燥しない若干の水を残した状態で建築材料としてはベストなコンディションです)で炭素量の平均は0.230g/c㎥でした。複数のサンプルを調べて平均して1立米あたり230kgの炭素を含んでいると私は結論付けています。


木の重さは、体積×比重(あるいは密度)で測ります。 


たとえば松で長さ100cm×幅100cm×厚み100cmの場合なら、   1m×1m×1m= いわゆる1立米の体積は1,000,000c㎥ で、 比重が0.54とすると
1.000.000×0.54÷1000=540kgとなります。 
大体ですが、松の場合、重量の43%程度が炭素だと言えます。


P63 炭素量がそのまま二酸化炭素になるわけでなく、炭素から二酸化炭素への変換は、原子や分子の質量の比較になり、

 

原子量は

 H水素1.0

C 炭素12.0

O 酸素16.0(その他、例えばN 窒素は14.0などとなります)

 

なので、CO2=12+(16×2)=44 となります。ですから、C(質量12)の量からCO2(質量44)の量を出す時はC×(44/12)となり、


炭素量×44÷12=二酸化炭素量という計算式になります。


3,910kg×44÷12=14,337kgとなり、これは「ブナ」の木1303本が1年間に吸収する二酸化炭素量になります。「ブナ」の木が1年間に吸収する二酸化炭素量は独立行政法人森林総合研究所の試算によると11kgとなります。


「古民家」を解体して廃棄するより、残せれば少なくともこのブナの木1303本余りの二酸化炭素を排出しなくてすみます。


昭和35年以前に建てられた古民家はP29の表などから読み解くと概ね300万戸残っています。最新のデータを調べても約280万戸残っています。もしこの古民家を解体すると、前述の愛媛大学農学部森林資源利用システムの杉森准教授の研究によると昭和28年建築の46坪の住宅で構造材と化粧材を合わせて17立米の木材が使われていました。


1立米、540kgの炭素と仮定すると、540kg×17立米×280万戸=25.704.000.00025.704.000.000×44÷12=9.428.000.000÷11=857.090.9098億5千7百本以上のブナの木が1年間に吸収する二酸化炭素の削減にも繋がるのです。

ちなみにブナの木が二酸化炭素削減の数値として良く使われるのは

 

1、全国にある

 

2、ブナの木の二酸化炭素吸収量が初めに解ったからです


現在は、杉の木の吸収量が解って来たためブナの木より杉の木に表示を変えていくのが流行っています。

木の二酸化炭素の吸収量は、種類だけではなく、高さや幹の太さ、生えている場所、そして気候などによっても当然ちがってきますが、木の種類ごとの二酸化炭素吸収量は、下の計算式でおよその数を出すことができます(あくまで概算)


幹の体積の増加量(m3/年)×容積密度(トン/m3)×拡大係数×炭素含有率=年間吸収量

 

参考 

http://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/ondanka/con_5.html


ただし、体積や容積密度を量ることは難しいので、一般的にはスギやヒノキなど、幹が太くて背の高い木ほど二酸化炭素吸収量が多いとおぼえておくといいし、針葉樹の方が広葉樹より吸収率が高いといわれていて、スギ(針葉樹)とブナ(広葉樹)との比較では、スギはブナの1.9倍の二酸化炭素量を吸収するというデータがあります。


そして樹齢によってももちろん吸収量は異なります。若い木の方が老齢の木より多くの二酸化炭素を吸収します。日本の森林の約4割は人工林、杉が沢山植えられています。伐採せずにおいておくとどんどん年老いて花粉も出しますが二酸化炭素の吸収量も減少していきます。山を元気にする事は地球温暖化防止にも繋がります…